COVID-19関連追加(202061日)

 

【重症COVID-19に対するアナキンラ:コホート研究】

Huet T, et al. Anakinra for severe forms of COVID-19: a cohort study.

Lancet Rheumtology. May 29, 2020.

https://doi.org/10.1016/s2665-9913(20)30164-8.

Background

コロナウイルスは自己免疫性疾患に影響するIL-1β,IL-6tumour necrosis factorや他のサイトカイン産生を促進する.リコンビナントIL-1受容体拮抗薬はSARS-CoV-2に関連した過剰免疫状態を中和作用がある可能性が考えられている.これは呼吸機能が悪化している徴候を示している重症COVID-19入院患者に対して,アナキンラ(Swedish Orphan Biovitrum, Stockholm, Sweden)を投与して評価したopen label studyである.

Methods

The Ana-COVID studyは,Groupe Hospitalier Paris Saint-JosephParis, France)からの前向きコホートと同病院の2020318日から始まっているCOVIDコホートから選択したヒストリカルコントロールコホートを含む.患者はCOVID-19に関連した両側肺炎を呈している18歳以上で(PCR陽性あるいは画像的診断),6 L/min以上の酸素投与下でSpO2 93%以下あるいは24時間を超えて室内気で3%SpO2低下(3 L/minの酸素投与下で93%以下)を示した患者を選択した.ヒストリカルコントロール群も同様の基準とした.アナキンラ群はアナキンラ皮下注(はじめの72時間は100mg x 2/日,以後100mg/日を7日間),導入時の標準治療も継続した.ヒストリカルコントロール群は標準治療と支持療法を受けていた.主要アウトカムは侵襲的人工呼吸管理のためICU入室あるいは死亡とした.主要解析はintention-to-treat解析に基づく(アナキンラ群は少なくとも一回の治療を受けた).

Results

2020324日から46日まで,アナキンラ群52例とコントロール群44例が同定された.アナキンラ群で低いBMI(平均差-3.5 kg/m2, 95% CI, -5.5 to -1.5; p= 0.0009),より長い治療前の有症状期間(2.2, 95% CI, 0.6 to 3.9; p= 0.0088),より多い血小板数(58x109 cells/L, 95% CI, 16 to 99; p= 0.0071),より多いヒドロキシクロロキン治療を受けていた患者比率(29%, 95% CI, 12 to 45; p= 0.0007),より多いアジスロマイシン治療を受けていた患者比率(17%, 95% CI, 3 to 32; p= 0.015)が認められた(Table 1).侵襲的人工呼吸管理のためICU入室あるいは死亡が,アナキンラ群は13例(25%)であり,コントロール群は31例(73%)であった(ハザード比HR 0.22, 95% CI, 0.11 to 0.41; p< 0.0001Figure 1A死亡単独(HR 0.30, 95% CI, 0.12 to 0.71; p= 0.0063)(Figure 1B),侵襲的人工呼吸管理単独(HR 0.22, 95% CI, 0.09 to 0.56; p= 0.0015)(Figure 1C)も同様の結果であった多変量解析でもアナキンラの治療効果は有意であった(HR 0.22, 95% CI, 0.10 to 0.49; p= 0.002Table 2生存あるいは人工呼吸器離脱したアナキンラ群39例において,酸素必要量はmedian 7 L/minIQR 6 to 9at day 0からmedian 2 L/minIQR 0 to 4at day 7まで減少した.中央値差は,-4 L/minIQR 0 to 4; p< 0.0001, singled-rank test)であった.

CRPの鋭い増加がday -4からday 0に認められ,アナキンラ群のday 4の治療と一致して減少が認められたFigure 2.この現象はCRPがおおむね高値のままのコントロール群とは対照的であった.治療前day 0において,アナキンラ群45例(87%),コントロール群36例(82%)はCRP100 mg/Lを超えていた.両群において,CRP50 mg/Lを下回る例は認めなかった.

肝トランスアミナーゼの上昇がアナキンラ群7例(13%),コントロール群4例(9%)に認められた(正常上限の3倍を超える)アナキンラ群10例(19%)とコントロール群5例(11%)において入院中に血栓イベントが認められた.アナキンラ群において,肺塞栓症が7例(13%下肢深部静脈血栓症が3例(6%動脈血栓症が1例(2%に認められた.アナキンラ群において入院中に細菌感染は認めなかった.

 

 

 

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Figure 1: Kaplan-Meier cumulative estimates of probability of death or invasive mechanical ventilation in the ICU (A), death (B) and invasive mechanical ventilation in the ICU (C) in the anakinra group compared with the historical group

 

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Figure 2: Comparison of the mean CRP concentration over time among all patients of the anakinra and historical groups, until discharge from hospital or death

Discussion

・高い死亡率を有する重症COVID-19に対して抗ウイルス薬のエビデンスの欠如から,ウイルスそのもの,あるいは続発するサイトカインストームと呼ばれる過剰免疫状態のそれぞれの役割の疑問が生じる.RCTsのデータはないものの,IL-1受容体阻害薬であるアナキンラはマクロファージ活性化症候群,血球貪食性リンパ組織球症,そしてCARchimeric antigen receptorT細胞誘導サイトカイン放出症候群に対して有効であるという報告が散見される

・イタリアから重症COVID-19ARDS,過剰免疫状態の患者に対して行った高濃度アナキンラ静注治療は生存と臨床的アウトカムを改善したと報告されている1)

・多くは軽症であるCOVID-19に対してどのタイミングでこの治療を行うか疑問が残る.急速かつ高度のCRP上昇はウイルス感染症が全身性かつ重症化する予測マーカーになりうるかもしれない

・有害事象としての肝酵素の上昇の頻度は両群とも同様であり,イタリアの報告でも同様の結果であった1)

血栓症がIL-1受容体拮抗薬によるものなのか,COVID-19関連凝固異常症によるものなのかはわからなかったIL-1の上昇は凝固因子を増加させる報告もある一方で,凝固異常症に対するIL-1遮断の効果の報告もある2)3)

Limitation:対照群はヒストリカルコントロール群であったこと,ヒストリカルコントロール群とアナキンラ群のサイズが異なり交絡因子の存在がありうること(特にコントロール群で肥満が多かった.多変量解析で基礎疾患を変数としたが.).

 

1) Cavalli G, et al. Interleukin-1 blockade with high-dose anakinra in patients with COVID-19, acute respiratory distress syndrome, and hyperinflammation: a retrospective cohort study. Lancet Rheumatol. 2020; (published online May 7.)

2) Osnes LT, et al. Inhibition of IL-1 induced tissue factor (TF) synthesis and procoagulant activity (PCA) in purified human monocytes by IL-4, IL-10 and IL-13.

Cytokine. 1996; 8: 822-827

3) Liberale L, et al. Interleukin-1β mediates arterial thrombus formation via NET-associated tissue factor. J Clin Med. 2019; 8E2072