COVID-19関連追加(202064日)

 

COVID-19曝露後のヒドロキシクロロキン予防投与:RCT

Boulware DR, et al. A Randomized Trial of Hydroxychloroquine as Postexposure Prophylaxis for Covid-19. N Engl J Med. June 3, 2020.

doi: 10.1056/NEJMoa2016638.

BACKGROUND

ヒドロキシクロロキンがSARS-CoV-2曝露後の感染を防止するかどうかは明らかではない.

METHODS

アメリカ合衆国とカナダの一部地域で行われたヒドロキシクロロキンの曝露後予防効果を調査したプラセボ対照無作為化二重盲検比較試験家庭内あるいは職場で6フィート未満の距離でCOVID-19感染者と接触し,フェイスマスクおよびアイシールド未着用(高リスク曝露),フェイスマスクのみ着用(中等度リスク)の18歳以上の成人を登録した曝露後4日以内で,ヒドロキシクロロキン群(800mg1回,続いて6-8時間後に600mg,それから600mg/日をさらに4日間内服)とプラセボ群に無作為割り付けを行った.インターネットベースによる調査.プライマリアウトカムは14日以内のCOVID-19検査陽性に伴う症状,または検査が行えない場合はCOVID-19に関連した症状の発現としたconfirmedケース:PCR陽性,probableケース:咳,息切れ,呼吸困難,発熱・悪寒戦慄・筋肉痛・頭痛・咽頭痛の2つ以上の症状,新たな嗅覚・味覚異常,possibleケース:下痢を含む1つ以上の矛盾しない症状.セカンダリアウトカムは,COVID-19に関連した入院あるいは死亡,PCR陽性,様々な原因による臨床試験介入の中止,ビジュアルアナログスケール(0:無症状〜10:重篤な症状)を基にした5日目と14日目における症状の増悪とした.アウトカムデータは対象登録後,14日以内に解析したPCR検査の結果,関連症状,臨床試験のアドヒアランス,有害事象,入院を含むアウトカムデータは参加者の報告を通して集計した.審査委員会は参加者の25%,そして50%14日間の試験を終了した際にデータを再審査した.中止基準に基づいて暫定的な解析が行われ,56日の3回目の暫定解析によって試験は中止された.

RESULTS

無症状成人参加者821例がエントリーされ,ヒドロキシクロロキン群414人,プラセボ群407人に無作為割り付けされた(Figure 1Table 1).参加者はmedian 40歳(IQR, 33 to 55,女性が51.6%424/821人)であった.基礎疾患を有していたのは27.4%225/821人)であり,高血圧症12.1%99/821人),気管支喘息7.6%62/821人)であった.医療従事者は545/821人(66.4%)であり,医師およびそのアシスタントが342人(62.8%),看護師・看護助手が128人(23.5%)であり,彼ら・彼女らの曝露の原因は,患者から:418/545人(76.7%,不調を訴えた同僚から:107/545人(19.6%)であった.家庭内曝露は245/821人(29.8%)であり,その原因は,配偶者から:114/245人(46.5%),親から:43/245人(17.6%)であった.

719/821人(87.6%)はアイシールド,マスクを着用していない高リスク曝露であった.それらのうち365人がヒドロキシクロロキン群,354人がプラセボ群であった.参加者のおおよそ60%COVID-19曝露時にいずれのPPEも着用していなかった.

新たなCOVID-19感染(PCR陽性あるいは症状)が14日以内に107/821人(13.0%に認められた(Table 2新たなCOVID-19罹患率はヒドロキシクロロキン群(49/414, 11.8%)とプラセボ群(58/407, 14.3%)の間に有意差を認めなかった(p= 0.35絶対差は-2.4%95% CI, -7.0 to 2.2)であった継時的なCOVID-19の発生を示す(Figure 2両群に1人ずつ入院例が認められた不整脈発症例や死亡例は認めなかった.参加者の10.7%(ヒドロキシクロロキン群46人,プラセボ群42人)が14日間の観察を完遂しなかった.これらを含めても含まなくても試験の結果に影響しなかった.症状が悪化した113人のうち,13人がPCR陽性,74人がCOVID-19に矛盾しないprobableケース,13人はpossibleケースであり,10人はCOVID-19と診断されなかった.さらに4人はPCR陽性ではあったが,14日間の試験中は無症状であった(うち3人はその後発症した).COVID-19の症状数はmedian 4IQR, 2 to 5)であり,発熱(34.6%),息切れ(18.7%),倦怠感(49.5%),咽頭痛(40.2%),筋肉痛(37.4%),嗅覚消失(23.4%)であった.14日目に有症状であった参加者において,重症度スコア(010,重症度が増すと高スコア)はヒドロキシクロロキン群でmedian 2.8IQR, 1.6 to 5.0),プラセボ群でmedian 2.7IQR, 1.4 to 4.8)であった(p= 0.34).

全参加者においてアドヒアランスは中等度であった.5日間をこえて全19錠を服用したフルアドヒアランスはヒドロキシクロロキン群で75.4%312/414人),プラセボ群で82.6%336/407人)であった(p= 0.01).主たる中断原因は有害事象であった(ヒドロキシクロロキン群17人,プラセボ群8人)プラセボ群よりもヒドロキシクロロキン群で有害事象が多く認められた(Table 35日目までにヒドロキシクロロキン群で40.1%140/349人),プラセボ群で16.8%59/351人)に有害事象が認められた(p< 0.001吐気下痢,そして腹部違和感が最もみられた有害事象であった.治療が必要な深刻な有害事象や不整脈は認めなかった.有害事象を報告しなかった参加者と比較して,あらゆる有害事象を報告した参加者は,自分はヒドロキシクロロキンを服用していると信じている者が3.7倍多かった(94/504: 18.7% vs 122/179: 68.2%; p< 0.001).

 

 

Figure 1

https://www.nejm.org/na101/home/literatum/publisher/mms/journals/content/nejm/0/nejm.ahead-of-print/nejmoa2016638/20200603/images/img_xlarge/nejmoa2016638_f1.jpeg

 

 

Table 1

https://www.nejm.org/na101/home/literatum/publisher/mms/journals/content/nejm/0/nejm.ahead-of-print/nejmoa2016638/20200603/images/img_large/nejmoa2016638_t1.jpeg

 

Table 2

https://www.nejm.org/na101/home/literatum/publisher/mms/journals/content/nejm/0/nejm.ahead-of-print/nejmoa2016638/20200603/images/img_xlarge/nejmoa2016638_t2.jpeg

 

 

Figure 2

https://www.nejm.org/na101/home/literatum/publisher/mms/journals/content/nejm/0/nejm.ahead-of-print/nejmoa2016638/20200603/images/img_xlarge/nejmoa2016638_f2.jpeg

 

Table 3

https://www.nejm.org/na101/home/literatum/publisher/mms/journals/content/nejm/0/nejm.ahead-of-print/nejmoa2016638/20200603/images/img_xlarge/nejmoa2016638_t3.jpeg

 

 

CONCLUSIONS

高用量ヒドロキシクロロキンの予防内服は高リスクあるいは中等度リスク曝露4日以内のCOVID-19発症を抑制しなかった

・この研究は重症リスクとされる年齢よりも若く,基礎疾患がない参加者が多かった.重症リスク群における予防投与のマージナルな有用性を除外することができないが,ヒドロキシクロロキンに関連するリスクの可能性はより重症リスク群で増加するかもしれないし,これは今回の研究で示せなかったどんな有益性も無効にするかもしれない.

limitation:全例にPCR検査を行っていないこと,インターネットによる調査であるためデータは参加者の報告によること.

Funded by David Baszucki and Jan Ellison Baszucki and others; ClinicalTrials.gov number, NCT04308668.

 

 

 

 

【ヒドロキシクロロキンのLancet論文(当HP523日分),

ACE阻害薬・ARBNEJM論文(当HP325日に52日追記分)の懸念表明】

HPにも掲載したLancetNEJMの論文にデータを提供したSurgisphere社がペーパーカンパニーではないか,著者とされる医師が存在しないのではないか,という疑惑の記事を英国のガーディアン紙(202063日付)が報告している.いずれも同社のチーフエクゼクティブのSapan Desai氏が共著者である.さらにイベルメクチン(®ストロメクトール)の有用性を述べたmedRxiv(査読前論文サイト)にアップされた論文にも同氏らの名前が掲載されている.以上を踏まえてか,両医学誌は懸念表明(expression of concernを掲載した.

 

 

 

 

COVID-19関連追加(202064日)に65日追記しました

 

SARS-CoV-2曝露後のヒドロキシクロロキン予防投与は効果なしという内容の

NEJM論文に対する反論】

EDITORIAL. Cohen MS. Hydroxychloroquine for the Prevention of Covid-19-Searching for Evidence. N Engl J Med. June 3, 2020.

doi: 10.1056/NEJMe2020388.

・著者らは821人の参加者を登録し,濃厚接触後に新たなCovid-19に一致したと考えられる症状が107人に認められたが,PCR検査で確定したのは参加者の3%未満であった

 

・この研究はSARS-CoV-2に曝露した証明の多くをPCR検査で確定しておらず,参加者が報告した症状の組み合わせで確定している.参加者が報告したCOVID-19の症状の特異度は低く,参加者の真のCOVID-19罹患はわからない.

参加者の薬のアドヒアランスは完全ではなく(less-than-perfect),特にヒドロキシクロロキン群に多かった

参加者はmedian 40歳と若い層が多く,基礎疾患を有さない人も多かった.参加者がCOVID-19の高リスク群であったなら,結果は違ったかもしれない.

・この研究において,確認されたSARS-CoV-2曝露時期とヒドロキシクロロキン内服開始時期の間にほとんどは3日以上のタイムラグ(long delay)が存在する.この研究で評価されたのは,SARS-CoV-2感染を予防できなかったというよりも,症状の悪化や進行を防げなかったということではないだろうか

・ヒドロキシクロロキン群における有害事象はほとんどが軽症であり,知られている心臓毒性は認めなかった.

・我々はこの臨床試験の結果をどう考えればよいのか?ヒドロキシクロロキン治療の提唱と広がりはSARS-CoV-2感染症に対する恐れが反映されている.しかし,ある程度はメディアや社会的な力が,むしろ医学的なエビデンスよりも,COVID-19への対応やリサーチを推し進めることがある.202061日時点で,ヒドロキシクロロキン治療に関しては203,予防投与に関しては60の臨床試験がリストされている.重要なのは,著者らの研究がどの程度これらの臨床試験に影響を及ぼすだろうか.もし,曝露後にヒドロキシクロロキン予防投与が感染を予防できないのならば(この臨床試験のlimitationがあるにしても),その他の予防投与に関する臨床試験は変更なく継続するべきなのか?これらの臨床試験の参加者に今回の結果を知らせる必要があるのか?曝露後予防に関するこの試験の結果はヒドロキシクロロキンの曝露前予防の臨床試験に影響するのか(例えば,15000人の医療従事者を対象としたHERO-HCQトライアル(NCT04334148))?Boulwareらによるこの研究の結果は,確定的というよりは物議をかもすものであり,ヒドロキシクロロキンの予防効果の可能性はまだ結論づけることはできない

 

 

 

 

LancetNEJMに掲載された一連の論文は撤回された】