COVID-19関連追加(2020614日)

 

COVID-19のフィジカルディスタンス,フェイスマスク,アイガードについて

:システマティックレビュー・メタアナライシス】

Chu DK, et al. Physical distancing, face masks, and eye protection to prevent person-to-person transmission of SARS-CoV-2 and COVID-19: a systematic review and meta-analysis. Lancet. published online. June 1, 2020.

https://doi.org/10.1016/s0140-6736(20)31142-9.

Background

SARS-CoV-2感染が拡大している.医療機関や非医療機関(コミュニティ)の感染防止におけるフィジカルディスタンス,フェイスマスク,アイガードの効果を調査した.

Methods>

システマティックレビューとメタアナライシスによって,適切なフィジカルディスタンス,フェイスマスクとアイガードの評価を行った.言語の制限を設けず,包括的研究として,そして簡便さやリソースなど背景因子としてSARS-CoV-2SARS-CoVMERSのデータを202033日からデータベースより収集した.通常の統計分析ならびにベイズ理論による分析,ランダム効果メタ回帰分析を行った.エビデンスの正確性(certainty)はCochrane methodsthe GRADE approachを使用した.関心のあるアウトカムは医療機関および非医療機関における感染者からの感染リスク;入院;ICU入院;死亡;回復時間;interventionによる有害事象;簡便さ,分配の平等性,リソースといった背景因子であるが,利用できたデータは,感染拡大に対するinterventionの効果背景因子のみであった.

この研究はPROSPEROCRD42020177047として登録されている.

Results

16カ国と6大陸にわたるランダム化試験はなく,医療機関と非医療機関における44の比較研究を含む172の観察研究を検討した(n= 25697).フィジカルディスタンスが1m未満と比較して,1m以上はウイルス感染伝播が少なかったn= 10736, pooled adjusted odds ratio [aOR] 0.18, 95% CI 0.09 to 0.38; risk difference [RD] -10.2%, 95% CI -11.5 to -7.5; moderate certainty);距離が長くなるほど防御効果は増加したchange in relative risk [RR] 2.02 per m; p interaction= 0.041; moderate certainty).

フェイスマスクは感染リスクの減少に寄与したn= 2647; aOR 0.15, 95% CI 0.07 to 0.34, RD -14.3%, -15.9 to -10.7; low certainty),N95あるいは類似のレスピレーターはより強い関連があった(使い捨てマスク(eg, 複数回使用できる多重構造(12-16層)コットンマスク; p interaction= 0.090; posterior probability >95%, low certainty)と比較した).

アイガードも感染の少なさと関連したn= 3713; aOR 0.22, 95% CI 0.12 to 0.39, RD -10.6%, 95% CI -12.5 to -7.7; low certainty).非調整下研究,サブグループそして感度分析も同様の結果であった.

 

Table 1:

 

 

Figure 1:  Forest plot showing the association of COVID-19, SARS, or MERS exposure proximity with infection.

Figure thumbnail gr2

 

 

Figure 2: Change in relative risk with increasing distance and absolute risk with increasing distance.

Figure thumbnail gr3

 

 

Figure 3: Forest plot showing unadjusted estimates for the association of face mask use with viral infection causing COVID-19, SARS, or MERS

Figure thumbnail gr4

 

 

Figure 4: Forest plot showing adjusted estimates for the association of face mask use with viral infection causing COVID-19, SARS, or MERS

Figure thumbnail gr5

 

 

Figure 5: Forest plot showing the association of eye protection with risk of COVID-19, SARS, or MERS transmission

Figure thumbnail gr6

 

 

Discussion

このCOVID-19SARS,そしてMERSにおける172の研究(44の比較研究; n= 25697人)のシステマティックレビューによると,最も実用的なエビデンスは,少なくとも1mのフィジカルディスタンスは感染を大きく減らし,2mのディスタンスはより効果的であるということであった.またフェイスマスクの着用は医療機関や公共施設に従事する人をコロナウイルスの感染から防御し,アイガードは付加的な効果があるが,これらinterventionをもってしても感染を完全に防ぐことができないし,最適に使用するためには,リスク評価やいくつかの背景を理解する必要があるCOVID-19SARSMERSにおけるこれらのinterventionを評価するランダム化試験は存在しない.

いままでのレビューはCOVID-19に対してどんなエビデンスも持たなかったし,COVID-19感染を抑制するinterventionの効果を得るために,その他のβコロナウイルスのエビデンスを直接使うことができなかった.いままでのランダム化試験からのデータは,COVID-19に当てはめて推測するにはエビデンスの確信性が低い,季節性インフルエンザのようなコモンな呼吸器ウイルスが主体であった.さらにいままでの実用的なランダム化試験の総論では分析におけるcluster effectsを説明できなかったし,それは効果の推定を不正確にする.研究間あるいは研究内の比較において,我々はその他のマスクと比較して,N95あるいは類似のレスピレーターのより大きな効果を見出した.この見解はより大きな効果はないという低い確信性のエビデンスが記されている4つのランダム試験の結果とは一致しない.しかしながら,そのレビューでは信頼区間は広かったため,意義のある防御効果が除外できなかった.我々は事後推定が記載されたランダム試験から得た間接的なデータを用いて,ベイズ理論にこれらの見解を同調させた.この過程にもかかわらず,我々の見解はマスクがSARS-CoV-2SARS-CoVMERS-CoVの感染リスクを減らすことに関連するだけでなく,N95あるいは類似のレスピレーターは使い捨てのメディカルマスクあるいは複数回使用できる多重構造(12-16層)コットンマスクよりもウイルス感染を強く防御することに関連するかもしれないことを支持し続けた.にもかかわらず,これらのデータはlimitationがあるため,我々は効果の高い確信性を得られなかった.我々の見解は季節性ウイルス感染症に対してはメディカルマスク以上にN95レスピレーターは効果がある可能性を示したランダム研究に一致した.さらに適切なフィジカルディスタンスと母集団や医療従事者の防御のための様々なマスクの効果のランダム化試験を含む質の高いリサーチが必要である.COVID-19に対するフェイスマスクの適切使用に関する2つの臨床試験(NCT04296643 [n= 576], NCT04337541 [n= 6000])が登録されている.このようなデータが実用的になるまで,我々の見解はCOVID-19感染を減少させるためにフェイスマスクを使用することを最も評価するものになる.我々はアウトブレイクにおいては政策作成に対して強く,おそらくは反対の感情が生まれることを認識している.以下はthe 2007 SARS Commission Reportにある1つの見解である.

“〜医療従事者の安全の観点から,リスクを減らす妥当である予防行為,例えばN95レスピレーターを使用することなど,においては科学的な正確性を待つ必要はないと認識している.”

“〜もし私たちがSARSから何も学ばず,政府が問題をそのままにするならば,私たちは次のパンデミックに不幸な対価を払うことになるだろう.”

これに反論する見解として,科学的な不正確性と背景にある考えによって微妙な違いのあるアプローチが生じることになるだろう.難しいかもしれないが,政策担当者は注意深く我々の結論に沿った上記の2つの見解を熟考する必要がある.

我々は,多くの国で実践されているような,少なくとも1mのフィジカルディスタンスが感染リスクの大幅な減少に関連がある可能性と2mのディスタンスがより効果的であるかもしれないことについて中等度の正確性をもったエビデンス(moderate certainty)であることを見出した.さらに3mについても推定した.フィジカルディスタンスの主要なベネフィットは前方の感染伝播を防ぐことであり,それによってSARS-CoV-2感染の有害なアウトカムを減少させる.従って,このレビューの結果は少なくとも1mのフィジカルディスタンス(そしてもし可能ならば2m以上)の方針の実践を支持する.

フェイスマスクが医療従事者と感染曝露リスクがあるコミュニティの人達の感染を防御するという状況に関係なくフェイスマスクの使用を支持する結果を従来の統計分析ならびにベイズ理論による分析が導いた.未調整下の分析結果から,コミュニティにおけるフェイスマスクは医療機関よりも効果が薄いという印象を持っていたが,医療機関と非医療機関の間のN95レスピレーターの使用の違いを調整した後では,どんな状況においてもフェイスマスクの効果における厳格な違いを認めなかった.よって状況によるeffect-modificationの信頼性は低かった.またマスクの着用は簡便である.それゆえ政策担当者は,現在フェイスマスクとフェイスガードの供給が不足しているグループに平等に関与できるよう努力するべきである.現在,マスク,PPEの供給が不足している.この観点から,我々のレビューで検討されたマスクは複数回使用できる多重構造(12-16層)コットンマスクとガーゼマスクであった.現時点で,SARS-CoV-2の感染経路は飛沫感染と接触感染であり,エアロゾル感染は議論があるが,我々のメタアナライシスはサージカルマスクよりもレスピレーターはより強い防御効果を持っていたかもしれないというエビデンス(たとえ確信性は低くても(low certainty))を示した.エアロゾル感染は生物学的に確かかもしれないし,季節性コロナウイルスRNAが呼吸の細かいエアゾル中に検出されたというプレクリニカルな観察もあるが,RNAの検出は必ずしもウイルス複製や感染性を意味しない.にもかかわらず,我々の研究は,エアゾル化がないにしろ,レスピレーターがマスクよりも感染防御に効果的であるかもしれないことを示した.現時点で,病院における研究においてエアゾル手技以外の空気中に生きたウイルスがいることを支持するデータは存在しない.もしエアロゾル化するならば,スーパースプレッダーイベント,ある種の医療環境(救急室,ICU,病室,透析室)のような他の要因,そして換気といった環境要因は個人の防御ストラテジーによる防御の程度に影響するかもしれないが,我々はこの観点を考えるデータを持っていない.

我々のレビューの強みは,AIサポートによるタイトルとアブストラクトのデュアルスクリーニング,フルテキストの評価,バイアスのリスク評価,言語による制限がないことを含むシステマティックレビューメソッドに合致していることである.SARS-CoV-2SARS-CoVMERS-CoV患者を含み,202033日まで関連データを検索した.GRADEシステムによるエピデンスの質・確かさを評価した.そしてパンデミックが起こる前に確立していたエビデンスがある論文の大部分は中国からのものであり,それを同定し査定した.

Limitation:検討したすべての研究は非ランダム化試験であり,必ずしも完全に調整されておらず,リコールあるいは測定バイアス(例えば,いくつかの研究では直接の接触(direct contact)は測定されていなかったかもしれない)が存在したかもしれない.また我々の研究における効果は量的推定(quantitative estimates)であり,質的な効果な恐らく確信性は高かった(high certainty).多くの研究からは正確な距離の情報は得られなかったし,直接の接触(direct contact)は0m距離に等しい;我々の研究はリスクの推定のための予測を提示したが,定量的に2m以上の距離がより効果的かどうかを検討した研究は存在しなかった.非医療機関におけるinterventionの効果を評価した研究はほとんどないが,我々は主として感染者の家庭内や接触者においてマスクの効果を評価し,様々な状況において有用性が観察された.またほとんどのエビデンスはSARSMERS(全25697人のうちCOVID-19患者は6674人)のものだが,これらのエピデミックのデータはCOVID-19に多くの情報を与える.我々は感染リスクのある曝露期間の影響を評価しなかった.またレスピレーターを使用した場所においてエアロゾルが発生する状況であったかどうか,患者のマスク着用がそれぞれのinterventionにどう影響したかどうかについての情報には限りがあったが,エアロゾル手技が報告されている研究を調整しても,N95および類似のレスピレーターは他のマスクと比較してより強い関連を認めた.

Conclusions

少なくとも1mのフィジカルディスタンスは感染防御と強い関連を認めたそして2mまでの距離はより効果的であった直接的なエビデンスは限定されるが,フェイスマスクの適切な使用,特に医療機関におけるN95および類似のレスピレーター,コミュニティにおける12-16層コットンマスクやサージカルマスクは背景因子に依存しうる;より質の高いエビデンスの不足に取り組むためにあらゆるアクションが必要だアイガードは付加的なベネフィットを与えるかもしれない.これらのinterventionのより質の高いエビデンスを知るためにはランダム化試験が必要であるが,このシステマティックレビューは現時点において暫定的なガイダンスを示すための最適なエビデンスになるだろう.