COVID-19関連追加(2020627日)

 

COVID-19GM-CSF阻害薬について】

重症COVID-19肺炎に対するマブリリムバブの単施設前向きコホート研究と総論の2編.

 

(1)De Luca G, et al. GM-CSF blockade with mavrilimumab in severe COVID-19 pneumonia and systemic hyperinflammation: a single-centre, prospective cohort study. Lancet Rheumatology. June 16, 2020.

https://doi.org/10.1016/S2665-9913(20)30170-3

Background

COVID-19肺炎および全身性過剰炎症(systemic hyperinflammation)を伴う患者の死亡率は高い.COVID-19肺炎および全身性過剰炎症を伴う患者において,抗顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子受容体-αモノクローナル抗体であるマブリリムマブ(mavrilimumab)を標準治療に追加投与することで,臨床転帰が改善されるかどうかを検討した.

Methods

この単施設前向きコホート研究は,San Raffaele HospitalMilan, Italy)に入院した人工呼吸管理されていない重症COVID-19肺炎,低酸素血症,全身性過剰炎症を呈した18歳以上の患者を対象とした.患者は,その時点で行われていた標準治療に加えて,マブリリムマブを単回静脈内投与(6mg/kgされた.対照群は,同時期に同一病院で標準治療を受けた,ベースラインの特徴が類似した患者で構成された.主要アウトカムは,臨床的改善までの時間(臨床状態の7段階評価尺度で2点以上の改善と定義)とした.その他のアウトカムは,臨床的改善を達成した患者の割合,生存,人工呼吸管理なしの生存,および解熱までの時間とした.有害事象は毎日モニターした.

急性肺傷害は,P/F比≦300Hg,両側の陰影,左房圧上昇なし,と定義した.全身性過剰炎症状態は,正常範囲を超えたLDHの上昇(正常125-220U/L)に加えて,血清CRP100mg/L(正常< 6mg/L)あるいはフェリチン≧900μg/L(正常30-400μg/L)と定義した

Procedures:

患者はプロトコール実施時に標準的な治療を受けていた.COVID-19肺炎で入院した全患者は,入院時にヒドロキシクロロキンの経口投与(200mg12回),アジスロマイシンの静脈内投与(500mg11回,患者の尿抗原検査でレジオネラ肺炎陰性と判定されるまで),ロピナビル/リトナビルの経口投与(400mg/100mg12回),酸素投与または非侵襲的人工呼吸器(CPAP 10cmH2O)を受けていた.

マブリリムマブ(Kiniksa Pharmaceuticals, Lexington, MA, USA)を,6mg/kgを単回投与量として静脈内投与した.全身性過剰炎症を伴うCOVID-19肺炎の診断が確定した時に開始した.

臨床状態の評価は,WHO RD Blueprint Groupが推奨している以下の7段階の順序尺度で行った:@退院した患者,A酸素投与を必要とせず,継続的な医療ケアも必要としない入院,B酸素投与は必要としないが,継続的な医療ケアは必要な入院,C低流量酸素療法(FiO2 35%以下)を必要とする入院,Dネーザルハイフロー療法(FiO2 40%以上),あるいは非侵襲的人工呼吸管理,またはその両方を必要とする入院,E人工呼吸管理を必要とする入院,F死亡.

クリニカルアウトカムは初めて選択基準を満たした時から28日間の観察期間において評価された.特に,ベースラインはマブリリムマブによる治療が開始された日とし,コントロール群においては初めて選択基準を満たした日とした.

Results

2020317日〜415日に,COVID-19肺炎と全身性過剰炎症状態を呈する患者13例(median 57 [IQR, 52-58], 男性12 [92%])にマブリリムマブを投与し,同時期対照患者26例(median 60歳[IQR, 53-67, 男性17例[65%], Table 1)に標準治療を実施した.

 

Table 1:

 

マブリリムマブ群では11例(85%),対照群では18例(69%)が発熱していた.ベースライン時に,マブリリムマブ群では4例(31%),対照群では11例(42%)が低流量酸素療法を受けていた(FiO235%,7段階評価尺度のカテゴリーCに相当).マブリリムマブ群では6例(46%),対照群では9例(35%)が高流量酸素療法(FiO240%,非侵襲的人工呼吸を行わず,7段階評価尺度のカテゴリーD)であり,マブリマブ群では3例(23%)、対照群では6例(23%)が非侵襲的人工呼吸管理を受けた(7段階評価尺度のカテゴリー; p= 0.75; Table 1). PaO2:FiO2比のmedianは群間で比較的低かった.ベースライン時に人工呼吸管理を受けていた患者はいなかった.

28日間の観察期間において,マブリリムマブ群では死亡した患者はおらず,対照群では7例(27%)の患者が死亡した(Fisher’s exact test: p= 0.086; Figure 1A.すべての死亡例は重症呼吸不全を呈する患者で認められ,これは7段階評価尺度でスコアが4を超えたものであった(Cochran-Mantel-Haenszel test: 治療群の層別化後,死亡におけるベースラインスコアの影響としてp= 0.0094);死亡7例のうち6例(86%)は観察期間の第1週目に認められ,残り1例の死亡は第8日目に認められた.

観察期間28日目において,マブリリムマブ群では全例,対照群では17例(65%)が7段階評価で2点以上の臨床的改善を示した(p=0.030; Table 2マブリリムマブ群では,人工呼吸管理に移行した患者は1例(8%)であったのに対し,対照群では9例(35%)が人工呼吸管理に移行または死亡した(p= 0.14; Table 2; Figure 1B人工呼吸管理に移行したマブリリムマブ群では,28日間の観察期間中に臨床的改善がみられた人工呼吸管理なしの生存は,マブリリムマブ群と対照群で有意差を認めなかった(Figure 1B

注目すべきは,エンドポイントである臨床的改善に到達した日数が,マブリリムマブ群では対照群に比較して有意に少なかったことである(median 8 [IQR, 5-11 vs 19日[11- >28])Kaplan-Meier plot(χ2= 14.59, p= 0.0001; Figure 1C; Table 2)に示す.

したがって,マブリリムマブによる治療は,標準治療に比べてより早期の退院と関連していた(median 10 [IQR , 9-12] vs 20[12->28], p= 0.0030; Table 2.臨床状態の変化をFigure 2に示す.

 

 

Table 2:

 

logスケールにおいてベースライン値を共変量として共分散分析(ANCOVA: analysis of co-variance)を行うと,28日目のベースラインからのP/F比の増加量は,マブリリムマブ群の方が対照群よりも高かった(275mmHg [IQR, 202-313]  vs 175mmHg [-63-287])(p= 0.026マブリリムマブ群では全例でP/F比が25%以上改善した(p= 0.026:一方で対照群は17例(65%)であった.また,マブリリムマブ群では全例で最終フォローアップ時のP/F比が300mmHg以上であった(p= 0.030:一方で対照群は17例(65%)であった.

マブリリムマブ群の呼吸器機能の改善は,血清CRPの低下と並行していた(最終median CRP 8 mg/L [6-28] in マブリリムマブ群 vs 52 mg/L [14-141] in 対照群; p= 0.0068

14日目までに,マブリリムマブ群では,11例中10例(91%)で解熱した一方で,対照群で解熱したのは18例中11例(61%)であった(p= 0.18);解熱までの時間は,マブリリムマブ群では対照群に比べて有意に短かった(median 1 [IQR, 1-2] vs 7 [3->14];

χ2= 6.76, p= 0.0093; Figure 1D

 

 

Figure 1:

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Figure 2:

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肺炎の評価の一つとして胸部CT検査を行った.マブリリムマブを投与した代表的な2名の患者のベースライン時と退院時の画像所見では,陰影の有意な改善が認められた(Figure 3).

 

Figure 3:

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Dダイマー値の上昇がCOVID-19の悪化と関連しているかどうかは現在議論されているため,39例の患者を対象に利用可能なデータを探索した.しかし,Dダイマー検査は治療プロトコールの時点では標準検査の一部ではなかったため,15例(38%)の患者ではデータが得られなかった.限られたデータの中で,ベースライン時のDダイマー値は,マブリリムマブ群ではmedian 0-8μg/mL [IQR, 0.4-1.5],対照群ではmedian 1-7μg/mL [IQR, 1.4-3.9]であった.さらなる解析の結果では,測定可能な患者のベースラインでのDダイマーのレベルは,観察された治療効果に影響を与えないようであった(データは示していない).

マブリリムマブの投与は,すべての患者において良好な忍容性を示し,急性輸液反応は認めなかった.好中球減少症も認めなかった.またマブリリムマブ群では,CRP,白血球,血清プロカルシトニンの上昇が1例に認められた.この患者は,投与3日後にICUに入院した.経験的な(empirical)抗生物質治療が開始されたが,抗生物質治療前に得られた血液および尿の細菌培養は陰性であった.対照群では3例(12%)に感染症が合併した.

Discussion

我々の研究は,COVID-19肺炎と炎症過剰状態を呈した患者に対してマブリリムマブを投与することで,標準治療のみの場合と比較してクリニカルアウトカムが改善したことを示唆している.28日間の観察期間においてマブリリムマブによる治療は,標準治療と比較して,呼吸器パラメータのより優れ,より早期の改善,早期の炎症反応の改善,死亡例の減少に関連していた.マブリリムマブ投与による呼吸器アウトカムの改善は,標準治療と比較して,酸素療法のウイーニングの早期化と入院期間の短縮という結果につながった.マブリリムマブ群では,すべての患者が臨床的に改善し,観察期間において死亡例は認めなかった;一方,対照群では27%が死亡した.我々の研究における対照群の死亡率は,過剰炎症状態を呈する患者を対象とした同様のセッティングで行われた先行研究の死亡率と一致している.初期の死亡率において過剰炎症状態が重要な役割を果たしており,このような状況下での免疫調節療法は有効であろう.マブリリムマブの忍容性は全例で良好であった.

COVID-19肺炎の病態には,肺における不適応で有害な炎症反応が関与している.COVID-19肺炎患者の剖検検討では,炎症性滲出,好中球や骨髄系細胞の気道への浸潤が認められる.肺における有害な炎症は血清CRP上昇とフェリチン増加に一致し,これらは重症度のマーカーになる

GM-CSFは自然免疫において重要な役割を果たすサイトカインで,サイトカインストームのメディエーターである可能性がある.循環するGM-CSF濃度は生理条件下では低く,炎症状態では増加し,炎症の場においては様々な細胞によって産生され、先行予測型(feed-forward)の炎症増幅器として機能する.さらに,GM-CSFは肺サーファクタントの恒常性(ホメオスタシス)と肺胞マクロファージによって調節された自然宿主防御(alveolar macrophage-mediated innate host defence)を調節している.

マブリリムマブは抗GM-CSF-Rαモノクローナル抗体であり,顆粒球や骨髄系細胞におけるGM-CSFシグナル伝達軸を阻害する.関節リウマチ患者を対象とした第2相臨床試験において,マブリリムマブは炎症を抑制し,クリニカルアウトカムを改善し,忍容性も良好であった.この試験ではマブリリムマブの投与と臨床的な呼吸器疾患との間に明らかな原因関係は認めなかったこれは,GM-CSFRのαサブユニットまたはβサブユニットの変異と同様に,GM-CSFに対する自己抗体が高レベルであることが特発性肺胞蛋白症および遺伝性肺胞蛋白症にそれぞれ関連していることを考えると,臨床的に非常に重要な知見である

抗サイトカイン生物学的製剤は、COVID-19における有害な炎症を抑制する可能性がある.しかし,我々は,炎症性カスケードの上流を阻害することで,しっかりとした結果が得られるのではないかと考えている.マブリリムマブは上流の顆粒球や骨髄系細胞の主要な経路を阻害し、COVID-19の発症に関与する無数の炎症性メディエーターがその下流で産生されるのを抑制することができる.この暫定的な結果は,GM-CSF pathwayを阻害することによって,COVID-19肺炎における過剰炎症状態を抑制することを示した初めてのエビデンスである.

Limitation: マブリリムマブ投与群と標準治療群は無作為に割り付けられたわけではなく,同時期に入院した患者から,いくつかの理由(例えば,薬剤が入手できなかった,薬剤が不足していた,患者の同意が得られなかったなど)でマブリリムマブを投与されなかった患者を,入院時に同時期の対照群として同定し,その患者のアウトカムをマブリリムマブ投与群のクリニカルアウトカムと前向き比較検討した.このように事前に確立された無作為化過程がないため,選択バイアス,治療バイアス,プラセボ効果をもたらす可能性がある.さらに,ベースラインのpopulationと臨床的特徴が一致しているにもかかわらず,マブリリムマブ投与以外の臨床的変数がクリニカルアウトカムに影響を与えている可能性がある.マブリリムマブ群では,登録前の発熱期間が対照群に比べて長かったため,この特徴がクリニカルアウトカムに影響を与えた可能性があるが,病期の違いは,特に入院日数が同等であることを考慮すると,その差は小さいと考えられる.さらにマブリリムマブ群は対照群に比べて男性は有意ではないものの,一般的に女性の方が男性よりも良好な予後を示しており,マブリリムマブによる治療に対するバイアスがあるかもしれない.28日間という比較的短期間の追跡調査は,入院中に容易に収集できるアウトカムデータに焦点を当てたものではあるものの,長期的な有効性と安全性の結論を出すには限界がある.その後のプラセボ対照試験で確認されるべきであるものの,マブリリムマブによる過剰炎症状態の抑制は,COVID-19に有益である可能性があると考えられる.

この暫定的な結果は,GM-CSFを阻害することによるCOVID-19の治療効果を示す初めてのエビデンスである.しかし対照試験でのさらなる検討が必要であり,今回得られた結果に基づいて,多施設,二重盲検,無作為化,プラセボ対照試験が計画されている.

 

 

(2)Mehta P, et al. Therapeutic blockade of granulocyte macrophage colony-stimulating factor in COVID-19-associated hyperinflammation: challenges and opportunities. Lancet Respiratory Medicine. June 16, 2020.

https://doi.org/10.1016/S2213-2600(20)30267-8.

 

Introduction

2020610日現在,COVID-19患者は全世界で710万人以上が報告され,408025人が死亡している.COVID-19の死亡の原因は,主としてARDSによるものである.

治療のターゲットになるのは,明確な違いがあり,ときにオーバーラップする2つの病態,すなわち最初のウイルスに対する反応と引き続き起こる宿主の過剰炎症反応である

以前に我々は,重症COVID-19患者においてウイルス性の過剰炎症状態をスクリーニングすることを推奨し,免疫調節がこの患者群の高い死亡率を減少させる可能性があることを示した.治療標的としては,IL-6IL-1,顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)など,過剰炎症状態で増加する炎症性サイトカインが考えられる

承認された免疫調節剤の臨床試験は,COVID-19患者を対象としてIL-6経路の阻害薬(トシリズマブ)およびIL-1経路の阻害薬(アナキンラ)が含まれており,現在進行中または開始が予定されている.さらに,米国食品医薬品局(FDA)は,COVID-19患者に対する抗GM-CSFモノクローナル抗体の緊急時のcompassionate useを承認している.20206月現在,6つの企業が,GM-CSFまたはその受容体を標的とする薬剤を用いたCOVID-19の臨床試験を計画しているか,または規制当局の承認を求めている(Table 1

ここでは,過剰炎症状態,ARDSCOVID-19に関連した過剰炎症状態の患者におけるGM-CSFの治療ターゲットの科学的根拠を支持するための蓄積されたエビデンスを提示する.また,ウイルス感染が背景にあるGM-CSFを標的とすることに関連した潜在的なリスクや,この疾患環境で臨床試験を実施する上での課題についても議論し,GM-CSFまたはその受容体を標的とする薬剤を用いたCOVID-19で計画されている臨床試験の詳細を提供する.

 

 

Table 1:

 

Key messages:

@過剰免疫状態を呈する患者における免疫調節(immunomodulation)はARDSへの進行を抑制し,気管内挿管を回避し,COVID-19の高い死亡率を減少させる可能性がある.

A顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)は,JAK-STAT経路を介してシグナルを伝達し,IL-6および他の炎症性サイトカインの産生を誘導し,T細胞に惹起される急性肺炎症と単球やマクロファージを活性化する自己増幅型サイトカインのループを結びつけて機能する可能性がある.

BGM-CSFは,慢性炎症性疾患(例:関節リウマチ)やサイトカインストーム症候群(例:キメラ抗原受容体T細胞療法に伴うサイトカイン放出症候群)の治療ターゲットとして追及されてきた.

CCOVID-19に関連したものを含む過剰炎症状態およびARDSにおけるGM-CSFをターゲットにした治療を支持する新たなエビデンスが得られている;モノクローナル抗体を用いてGM-CSFまたはその受容体を遮断する治療は,COVID-19の臨床試験において現在追求されている.

Dウイルスが惹起する過剰炎症状態を背景としてGM-CSFをターゲットにするベネフィットを追求するためには,組織のホメオスタシス,抗ウイルス免疫および宿主防御におけるGM-CSFの役割を阻害することに関連した潜在的なリスクとのバランスを慎重にとる必要がある

ECOVID-19患者のサブグループにおけるGM-CSFをターゲットとした場合のベネフィットとリスク,および治療の最適なタイミングを確立するためには,専門分野を超えた共同研究と無作為化比較試験が不可欠である.

 

Hyperinflammation and COVID-19

過剰炎症状態は,サイトカインストームと総称され,その反応を減少させるために免疫調節剤で治療される.過剰炎症状態の血球貪食性リンパ組織球症(HLH: haemophagocytic lymphohistiocytosis)は,多臓器不全を伴う劇症・致死的な高サイトカイン血症を特徴とし,通常,血球減少と肝機能異常を伴う.遺伝子異常が原因の場合,この疾患は原発性または家族性HLHと呼ばれる.二次性HLHは,感染症,リウマチ性疾患,悪性疾患(通常はリンパ増殖性疾患)などが引き金となって起こる過剰炎症性症候群である.サイトカインストーム症候群は,マクロファージ活性化症候群(リウマチ性疾患に伴う場合)(MAS: macrophage activation syndromeマクロファージ活性化様症候群(macrophage activation-like syndrome)(敗血症の場合)サイトカイン放出症候群(cytokine release syndrome)(キメラ抗原受容体[CAR]T細胞療法後)と呼ばれることがある.重症COVID-19は過剰炎症状態を呈し,それゆえに免疫調節療法が有効かもしれない.

ARDSは難治性の低酸素血症を特徴とするheterogeneousな疾患であり,低容量換気など標準的な支持治療を行っているにもかかわらず,死亡率は35-55%である.ARDSは両側の肺浸潤を伴う低酸素血症の進行あるいはその悪化によって定義され,市中肺炎に反応して発症することが最も一般的である.中国武漢のコホート研究によると,ARDSCOVID-19入院患者の約30%に発症し,高い死亡率と関連している.2つの異なるARDSサブフェノタイプ(低炎症性エンドタイプと高炎症性エンドタイプ)が同定されており,臨床像,バイオマーカー,臨床転帰,治療効果が異なることが明らかになっている.

重度COVID-19の臨床像は特異なものであるように思われ,多くの議論がある.新たな経験から,COVID-19における過剰炎症反応は,従来の二次性HLHやサイトカイン放出症候群の臨床像に一致しないことが示唆されているCOVID-19ではフェリチン値が死亡率を予測するが,二次性HLH患者で報告されているものよりもフェリチン値の範囲は低く,臨床的に肺病変が優位であり,典型的には実質的な血球減少を伴わない重度COVID-19患者ではリンパ球減少症は普遍的に認められるが,二次性HLHでは古典的にはリンパ球系に影響しないCOVID-19肺炎患者が非典型的なARDSを呈するかどうかについても議論されているが,COVID-19に関連するARDSは他のウイルスによって惹起されるフェノタイプとは異なるものではないとの見方が強まってきている.COVID-19に関連したARDSの管理方法が提案されており,臨床経験が蓄積されている.

 

The proinflammatory cytokine GM-CSF

GM-CSFは骨髄前駆細胞の増殖と分化を促進することにより,in vitroで顆粒球やマクロファージのコロニーを形成する能力を持つことから,造血成長因子として定義されていた.のちにGM-CSFは成熟骨髄系細胞(例えば炎症促進・活性因子であるマクロファージや好中球)に作用することがわかった.多面的成長因子であるコロニー刺激因子スーパーファミリーの他のメンバー(例えばマクロファージコロニー刺激因子や顆粒球コロニー刺激因子[G-CSF])と異なり,GM-CSFは定常状態の骨髄造血(myelopoiesis)の役割を持っていないようである.その代わり,GM-CSFは組織の炎症に重要な役割を果たしており,強直性脊椎炎といったTh17が関与する自己免疫・炎症性疾患の進展に関与しているエビデンスが積み上げられている.

GM-CSFは,肺,腸,皮膚などの組織で局所的に発現しているが,全身循環では実質的に検出できない健常肺では,GM-CSFはU型肺胞上皮細胞から分泌され(Figure 1),肺胞マクロファージの成熟と,サーファクタントの異化などの機能に重要な役割を果たしている.先天性または後天性のGM-CSF欠乏は,サーファクタントのクリアランス調節障害による肺胞蛋白症を生じる可能性がある.GM-CSFは,肺胞毛細血管バリアの性能の維持する重要な宿主防御機能を持っているさらに,それは細菌やウイルスが惹起する肺炎やARDSが背景にあるときの病原体除去という免疫刺激的な保護作用も持っている

組織炎症の場において,GM-CSFは産生され,局所的に作用する.T細胞は組織炎症においてGM-CSFの最も産生するようであるが,上皮細胞,内皮細胞,線維芽細胞,間質細胞,および造血細胞はすべてGM-CSFを産生することができ,たとえT細胞が遊走する前であっても,組織に制御された炎症性細胞の浸潤を統合するこのサイトカインの役割に見合ったものである.GM-CSFの局所産生は炎症とともに増加する.そして関節リウマチ患者の滑液や血清,多発性硬化症患者の脳脊髄液,ARDS患者の気管支肺胞洗浄液において,GM-CSFレベルは増加している.GM-CSFは,HLHのサイトカインカスケードを含む炎症性サイトカインネットワークの中心的役割を担い,tumor necrosis factorTNF),IL-6,そしてIL-23の発現を誘導するだけでなく,Th1またはTh17細胞の分化を促進し,マクロファージのM1様フェノタイプ(M1-like phenotype)への極性化(polarization: 性質変化すること)を促進する

 

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Figure 1: Role of GM-CSF in homoeostasis, viral response, and inflammation

GM-CSFは,サーファクタントをクリアして異化する肺胞マクロファージの成熟と機能に,そして宿主防御に重要なホメオスタシス的役割を果たしている.ウイルス曝露(例えば,SARS-CoV-2)に対する応答において,U型肺胞上皮細胞がGM-CSFを分泌し,特に肺胞マクロファージといった骨髄系細胞の自然免疫応答を改善する.重篤な炎症状態では,GM-CSF産生はU型肺胞上皮細胞と単球由来のM1様マクロファージ(M1-like macrophages)によってupregulateされ,その結果CD14+CD16+炎症性単球からのIL-6産生が刺激され,Th1およびTh17細胞が増加し,好中球の循環とプライミング(免疫を賦活するための予備刺激)が促進される.結果として,GM-CSF産生の自己分泌的な正のフィードバックのループが,さらなる炎症の環境を永続させる.

 

GM-CSF and neutrophils in hyperinflammation

GM-CSFと同様に,サイトカインG-CSFはマクロファージと抗原提示細胞の活性化に関与しており,好中球の走化性と遊走性を増加させることができるが,GM-CSFG-CSFの反応活動(response kinetics)は異なる.GM-CSFG-CSFよりも炎症に関与すると考えられているG-CSFは単球上のG-CSF受容体と相互作用し,growth factorの生理的濃度を下げるのではなく,薬理学的な刺激を継続的に与えていると考えられている.このメカニズムはモノカイン(単球やマクロファージから分泌されるサイトカインの総称)分泌を促進し,それに続くクローン増殖とTリンパ球の活性化を促す.活性化したT細胞はインターフェロン(IFN)γ,GM-CSFTNFを合成して分泌する.これらの因子は,単球上のGM-CSF受容体や他の受容体と相互作用し,追加的かつ継続的な刺激を単球に与える.

HLH患者に対してリコンビナントG-CSF投与に基づいて,HLHにおけるGM-CSFの役割のエビデンスが蓄積されている.臨床研究において,G-CSF投与がHLHを悪化させるかもしれない懸念がある;事実,リコンビナントG-CSF(例えば,lenograstim)の投与によって滑膜炎が増悪するという観察がある.これは関節リウマチのGM-CSF経路をターゲットにする根拠でもある.我々が知る限り,リコンビナントG-CSFあるいはGM-CSF投与後にHLHの増悪や再活性化(de novo provocation)を来した5例の報告がある.これらの報告を考慮すると,好中球増加症を伴う重症HLH患者に対してはリコンビナントG-CSFの投与を慎重に行うべきであろう

原発性および二次性疾患のマウスモデルの研究からHLHにおけるGM-CSFの役割のエビデンスが得られているが,GM-CSFは未治療の活動性疾患では上昇し,JAK阻害を目的とした治療によって有意に減少することが示されている.さらに,リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルスに感染したIFNγとPrf1のダブルノックアウトマウスでは,ヒトのHLHと同様にIL-6GM-CSFが優位のサイトカイン環境であるHLH様疾患が観察され,IFNγがHLHの発症に必須であるという定説が疑問視されている.同種幹細胞移植後のHLHのヒト化マウスモデルでは,IL-6TNFIFNγ,IL-18など過剰炎症状態の患者において増加すると予想されるサイトカインとともに,GM-CSFレベルが上昇していることが示されている.

HLHの病態における好中球が惹起する組織傷害の実験的のエビデンスも出てきている.HLHモデルマウスの脾臓における好中球は,TREM1 proteinupregulateし,intracellular TNFmacrophage inflammatory proteinMIP-1α(CCL3),MIP-1β(CCL4),およびIL-1βの産生を増加させた.このフェノタイプは,JAK1およびJAK2の阻害(ruxolitinib)で改善されたが,IFNγの阻害では改善されなかった.IFNγ阻害薬(ruxolitinibと比較)で治療した生存率が低いマウスは,好中球除去抗体(neutrophildepleting antibody)の追加で救命できたが,抗IL-6抗体や抗TNF抗体の追加では救命できなかった.これらのデータは,HLHにおける好中球活性化の関与を支持し,HLHが惹起する臓器障害と敗血症やARDSのような致死的な病態でみられる重篤な臓器障害が類似していることを示唆する

 

Targeting GM-CSF in ARDS

ARDSにおいてGM-CSFをターゲットとする科学的根拠がますます強調されているARDSの初期反応または滲出期は,肺胞マクロファージから分泌される,GM-CSFmonocyte chemoattractant protein 1CCL2),IL-1α,IL-8、およびTNFなど強力な炎症性メディエーターの放出によって特徴づけられ,好中球および単球の循環を促す.好中球は,proteinasesreactive oxygen species,そしてneutrophil extracellular trapsの放出を介したbystander tissue injuryのプライマリエフェクター細胞として作用することにより,ARDSの進展に強く関与している;最近の報告は,COVID-19におけるneutrophil extracellular trapsの関与を強調している.さらに,肺胞腔における好中球の程度,時間,およびプライミングの状態は,ARDSのアウトカムの強力な予測因子である.肺胞GM-CSFは,IgA Fc受容体,formyl peptide receptorFPR1),CD11bなどのupregulation,およびロイコトリエンB4受容体の発現を促進する好中球機能に影響を与えることにより,急性および持続的な好中球性炎症の一因になっている;走化性,貪食,ロイコトリエンB4およびアラキドン酸の放出,NADPHオキシダーゼ2CYBB)が惹起するスーパーオキシドアニオン生成;そして,phosphoinositide 3-kinasePI3K)依存性の好中球アポトーシス阻害によって惹起される顕著な生存促進効果を行使することによって.最近の研究は,急性肺傷害マウスモデルにlipopolysaccharideを吸入させることによるGM-CSF受容体α遮断が炎症を抑制できることを示している.

 

GM-CSF and COVID-19

COVID-19関連の過剰炎症状態およびARDS患者における治療ターゲットとしてのGM-CSFの可能性が高まっている.COVID-19患者に対してGM-CSFまたはその受容体をターゲットとした薬剤を使用したいくつかの臨床試験が計画されている(TableCOVID-19における,二次性HLHに類似したサイトカインの特徴(G-CSFIL-2IL-7IFNγ誘導性プロテイン10IFNγ-inducible protein 10 [CXCL10]CCL2CCL3,およびTNFなどの上昇)は疾患の重症度と関連している.我々の知る限り,BALFにおける報告はないが,COVID-19患者において,血清GM-CSFまたはG-CSFは健常者に比べてupregulateされている.またGM-CSF発現免疫細胞の増殖が,COVID-19の重症度と関連があるというエビデンスも出てきている.GM-CSFを発現するCD4+ T細胞(Th1),CD8+ T細胞,ナチュラルキラー細胞,およびB細胞の比率は,健常者および非重症化COVID-19患者と比較して,重症化COVID-19患者の血清では有意に高くなっているCD14+ CD16+ 炎症性単球(健常者ではほとんど認めない)がCOVID-19患者の末梢血で上昇し,ICUにおける肺疾患患者の重症度と相関している.COVID-19患者では,病原性CD4+Th1細胞の重症肺症候群誘発能力と単球(IL-6の高い発現に伴ったCD14+CD16+)の炎症性特徴とそれらの子孫細胞をGM-CSFがリンクさせることは間違いないようだ.それゆえ,GM-CSFは,Th1が惹起する急性肺傷害と,単球によるGM-CSFIL-6をさらに分泌する自己分泌ループを結びつけていると考えられる別の視点では,GM-CSF陽性リンパ球は,病原性や免疫病態の原因となるのではなく,持続的なウイルス複製に反応している可能性があり,GM-CSFは抗ウイルス免疫における保護的役割の可能性を示唆している

 

Inhibition of GM-CSF in COVID-19-associated hyperinflammation

COVID-19に関連した過剰炎症状態における抗GM-CSF治療の間接的なエビデンスは,CAR T細胞療法後のサイトカイン放出症候群からきている.免疫調節剤トシリズマブ(抗IL-6受容体モノクローナル抗体)はサイトカイン放出症候群の治療薬として認可されている.サイトカイン放出症候群は,in-vivoにおけるT細胞の増殖およびT細胞エフェクターサイトカインであるIL-6TNFCCL2GM-CSFの著明な産生と関連している.GM-CSF,フェリチン,およびIL-2の血清レベルが神経毒性と関連しているという報告がある.COVID-19および中枢神経症状を認める小児の血清および脳脊髄液でGM-CSFが上昇していたという報告もある.また中和抗GM-CSFモノクローナル抗体(lenzilumab)を用いた異種移植モデルによる概念実証研究(PoC: proof of concept)では,サイトカイン放出症候群は抑制され,CAR T細胞療法の効果は高められた.これらの知見をもとに,CAR T細胞療法を対象としたlenzilumabを併用した第2相臨床試験が計画されている.また,サイトカイン放出症候群のリスクを最小限に抑えるために,CRISPR-Cas9遺伝子編集によりGM-CSFをノックアウトした次世代CAR T細胞の開発が進められている.

いくつかの慢性炎症性疾患における GM-CSF の中心的な役割の知見から,炎症性疾患を背景に,このサイトカインを標的とすることに大きな関心が寄せられている.関節リウマチ患者を対象とした24週間の第3相比較試験(NCT04134728)では,GM-CSFotilimab),IL-6sarilumab),そしてJAK-STAT経路(tofacitinib)を阻害することを目的とされている.私たちの知る限りでは,明らかな安全性の懸念は確認されておらず,現在までにGM-CSFまたはその受容体を標的としたいかなる薬剤の臨床開発プログラムにおいても肺胞蛋白症の症例は報告されていない重症COVID-19関連の過剰炎症状態において,抗GM-CSFモノクローナル抗体による治療は,短期間の投薬で過剰炎症のスイッチを切るのに十分であると同時に,長期間のGM-CSF遮断に関連した起こりうる安全性の懸念を軽減することができるかもしれない.また,GM-CSFIL-6の産生を誘導し,JAK-STAT経路を介してシグナルを伝達することにも注目すべきであるJAK阻害薬の臨床試験がCOVID-19患者を対象に進行中であり(例:NCT04362137),IL-6経路COVID-19を対象としたいくつかの臨床試験の焦点となっている(例:NCT04320615).IL-6軸への関心は,COVID-19に関連した過剰炎症状態と,CAR T細胞療法に関連したサイトカイン放出症候群との間に類似性(例えば,CRP上昇)があると考えられていたことに起因すると考えられる.さらに,二次性HLHで使用される他の薬剤(例えば,IL-1を阻害するアナキンラ)もCOVID-19患者において現在研究されている.GM-CSF阻害は過剰炎症状態とARDSに影響を与える可能性があり,IL-6阻害よりも骨髄抑制性や肝毒性が低い可能性があるため,GM-CSFをターゲットにすることで,選択的なIL-6阻害よりも有益である可能性があるJAK阻害薬は慢性炎症性疾患(例えば,関節リウマチ)や骨髄増殖性新生物に対して認可されており,炎症亢進の研究が積極的に行われている.しかし,複数のサイトカインを同時に阻害することで起こりうる有害事象,および潜在的な血栓症リスクの増加については慎重な検討が必要であるCOVID-19における凝固障害のエビデンス,そして肺微小血栓症の剖検所見を考慮する必要がある.

 

Challenges of immunomodulation in COVID-19

COVID-19のようなウイルス性疾患において,組織のホメオスタシスの観点から,GM-CSFをターゲットとすることベネフィットと,宿主防御のために肺胞毛細血管バリアを維持し,上皮を修復するこのサイトカインの役割をブロックすることによるリスクとのバランスをとる必要があるGM-CSFをブロックするというよりも,むしろGM-CSFを用いた治療がARDSの治療に有用であるという反論もある.概念実証研究では,肺炎関連ARDS患者6例に対するGM-CSFの吸入による有用性が報告されている.そして,COVID-19患者にリコンビナントGM-CSFsargramostim)を吸入および静脈内投与する臨床試験が進行中である(NCT04326920ARDS患者のBALF中のGM-CSF濃度の上昇は生存率と正の相関があることを示唆するエビデンスもある一方で,ARDS患者を対象としたリコンビナントGM-CSF投与の無作為化試験(n=130)ではクリニカルアウトカムの改善は見られなかった.この試験では,14日間のGM-CSF静脈内投与は,臨床的に有害なアウトカムやBALF中のIL-6IL-8TNF,またはGM-CSFなどサイトカイン濃度の上昇とは関連していなかった.これらの観察結果は,GM-CSF投与が敗血症を悪化させないことを示した研究と相まって,ARDSにおけるGM-CSFをターゲットとしたアプローチに対する反論となりうる.まず,著者らが認めているように,この研究では治療を受けた患者数が予想よりも少なく,治療開始のタイミングが理想的ではなかった可能性がある(すなわち,ARDSの回復期).さらに,COVID-19におけるGM-CSF抗体を用いた介入試験は,ARDSの発症につながる前に,過剰炎症状態における免疫異常を減弱させることを目的としている;ひとたびARDSが起こってしまうと,この介入は手遅れになる可能性がある.

またGM-CSFは免疫調節の役割を持ち,樹状細胞の分化を調節することによって寛容性(tolerogenic)を持たせることができ,その結果,制御性T細胞(regulatory T cell: Treg細胞)は増加し,機能が亢進する.さらに,GM-CSFは抗ウイルス・抗菌免疫や宿主防御に影響を与えるので,GM-CSFの遮断はT細胞やB細胞の回復を阻害する可能性がある.リンパ減少は二次的な細菌感染の危険因子として確立されており,COVID-19における致死率とアウトカムの増悪を予測する可能性がある.COVID-19の非生存54例を対象としたコホート研究では,約50%に二次的な細菌感染が認められた.重症患者における好中球貪食能の後天的障害は院内感染を予測し,ex vivoにてGM-CSFを投与することで逆転する.しかしこの無作為化試験では,GM-CSFsargramostim)は好中球貪食を改善しなかった.COVID-19における免疫調節というものは,あくまで一時的なものであり,排除されていないウイルスを再び活性化する可能性をはらんでいるかもしれない.抗菌薬や抗ウイルス薬といった抗微生物的な予防策は,リスクを軽減するには不十分であり,耐性化微生物の発生を促進してしまう可能性がある.さらに,薬剤が惹起する(CAR T細胞療法後のサイトカイン放出症候群など)あるいは慢性炎症性疾患(関節リウマチなど)が惹起する過剰炎症症候群に対する免疫調節理論をウイルス性疾患に当てはめて推測することは不適切であるかもしれないなぜならば,体内に残存しているウイルスはサイトカイン血症への刺激を継続するだろうし,免疫調節はウイルス排出メカニズムに影響を与える可能性があるからだ.ウイルス性(COVID-19など),細菌性ARDS,あるいは他の原因のARDSにおける早期の病態生理をより深く理解することは,これらの状況における新規治療法および抗GM-CSF療法の役割を理解し,開発するために不可欠であろう.

IL-6を阻害することによる薬理効果(tocilizumabによる直接的な拮抗,あるいはJAK阻害および抗GM-CSFモノクローナル抗体による間接的な拮抗)は,CRPや発熱の急速な抑制を含むこれらの作用は,二次感染やウイルス再活性化を検出しにくくするだけでなく,治療薬が有効と誤って解釈してしまう可能性があるなぜならば,これらの効果が必ずしも臨床的に意味のあるアウトカムと関連があるとは限らないからである

 

Conclusions and future directions

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Figure 2A: window of opportunity in hyperinflammation for optimum treatment intervention

過剰炎症状態は何かしらの誘因(SARS-CoV-2感染など)によって始まり,早期の活性化していない状態(indolent)から劇症化した致死的な(fulminant and fatal)高サイトカイン血症へと進行する可能性がある.気管内挿管を行う時まで,救命の可能性がある免疫調節療法を保留してしまうと,最適な治療介入の機会を逸してしまう可能性がある

 

予後不良を予測する確かなバイオマーカーと,免疫調節薬の抗ウイルス反応への影響を最小限に抑えるために,臨床病期による宿主免疫反応の詳細な解析が急がれる.

現在進行中あるいは予定されている臨床試験は,パンデミック状況下での免疫調節薬の安全性と有効性についてエビデンスを提供するものであり,その結果が待ち望まれる.