COVID-19関連追加(2020630日)

 

COVID-19感染の広がりと季節性を評価するための温度,湿度,そして緯度の分析】

Sajadi MM, et al. Temperature, Humidity, and Latitude Analysis to Estimate Potential Spread and Seasonality of Coronavirus Disease 2019 (COVID-19). JAMA Netw Open. 2020; 3(6): e2011834.

doi: 10.1001/jamanetworkopen.2020.11834.

Importance

気候や季節性とCOVID-19感染の広がりの関連性を調査することは,予防・サーベイランス戦略に役立つ可能性がある。

Objective

気候とCOVID-19感染の広がりとの関連を調べる.

Design, Setting, and Participants

このコホート研究では,COVID-19のコミュニティでの感染拡大の有無にかかわらず世界50都市の気候データを調査した.COVID-19の感染が非常に拡大した8都市(中国・武漢,日本・東京,韓国・大邱(テグ),イラン・コム,イタリア・ミラノ,フランス・パリ,米国・シアトル,スペイン・マドリード)と,影響を受けていない,あるいはコミュニティでの感染が拡大していない42都市と比較した.20201月から310日のデータを収集した.

Main Outcomes and Measures

2020310日時点で,ある国で少なくとも10人の死亡報告があった場合に,実質的なコミュニティ感染と定義した.比較のために,世界のすべての地域においてCOVID-19が発生した都市と発生していない都市を調査した。各国で最大1つの代表的な都市が選ばれた.COVID-19が発生した国では,コミュニティでの死亡(community death)が確認された地域,そして死亡率が計算できなかった場合はコミュニティで症例が発生した地域を選択した;COVID-19が発生しなかった国については,首都または最大の都市を選択した.コミュニティでの死亡(community death)は,COVID-19の感染拡大の結果,死亡が認められたものと定義した.潜伏期間は約5日間,再生産数は約2と報告されていることから,感染が拡大したらしい期間を把握するために,最初に確認されたコミュニティでの死亡から2030日間前の気温の分析を行った.対照都市については,最初のコミュニティでの死亡日を使用したが,これは使用できない場合は最初の死亡日を使用した.死亡者がいない国では,データ収集の最終日(すなわち,2020310日)を用いた.2m 気温相対湿度(RH: relative humidity比湿(Qspecific humidity絶対湿度(AH: absolute humidityは,欧州中期予報センター(European Centre for Medium-Range Weather Forecasts )大気再解析ERA-5のデータを用いた.2m気温とは,地表から2mの高さの温度(すなわち,人間の活動の多くが行われている地表付近の温度);RH とは,大気がある温度で保持できる水蒸気の最大量の割合(飽和水蒸気量);Qとは,湿潤空気の中に含まれる水蒸気の質量をg/kgで定義したもの;AHとは,ある体積または空気の質量に含まれる水蒸気の総質量をg/m3で定義したものである.ERA-5を用いて全地球的に,また影響を受けた地域の緯度と気温の傾向を分析するために,気候学的予測(1979年〜2020年のデータ)と持続予測(2019年のデータ)を用いた.

Results

2020310日までの間,東西に一貫した狭い緯度帯に沿って広範囲にわたるコミュニティの感染拡大が認められた.当初は,疾患の新たな中心地はすべて北緯30度から北緯50度の大まかな範囲にあった;韓国(大邱:北緯35.9度;310日までに54人が死亡,7513人が感染),日本(東京:北緯35.6度;310日までに10人が死亡,581人が感染),イラン(コム:北緯34.6度;310日までに291人が死亡,8042人が感染),北イタリア(ミラノ:北緯45.6度,310日までに631人が死亡,10149人が感染)(Figure 1).イランにおける予想外の感染拡大が認められたため,我々は2月下旬にこの地図を作成した.その後に広範囲の感染拡大が起こった新たな地域,すなわち米国北西部(シアトル:北緯47.5度,28人が死亡,959人が感染),スペイン(マドリード:北緯40.5度,35人が死亡,1695人が感染),フランス(パリ:北緯48.7度,33人が死亡,1784人が感染)など,がある(Figure 1).この期間において,COVID-19はすぐ北方の国(例えば、ロシアのモスクワ:北緯56.0度;死亡なし,10人の感染),そして中国南方には感染は拡大しなかった.一方,中国の武漢(北緯30.8度)では3136人が死亡,80757人が感染している.東南アジアの患者数と報告された死亡者数は,先に述べた温帯地域に比べてはるかに少ない(例えば,タイのバンコク:北緯13.7度;1人が死亡,53人が感染;ベトナムのハノイ:北緯21.2度;死亡なし,31人が感染).

2020年の2m気温を用いた解析でも同様の結果が得られた(Figure 220201月の武漢,20202月のその他の都市においては,平均気温(空港気象台では49℃)の測定値に類似性が見られたこれらの地域におけるコミュニティで初めての死亡が認められた2030日前の平均気温も同様であり(空港気象台では 39℃),都市部の気温はアーバンエフェクトのため空港よりも若干高くなっていることを考えると,これらの平均気温は511℃の範囲内と推定される.これらの都市では,平均気温が同様であることに加えてアウトブレイクの時期が,年間の気温サイクルの中で冬の最低気温と重なっており,1ヶ月以上の期間は比較的気温が安定しているという共通性が見られる.これらの都市では,RH44%〜84%)にばらつきはあるが,Q36g/kg)とAH47g/m3)が一致して低かった平均気温が低く(空港気象台では39℃)Q値が低い(46g/kgような,2020310日時点でアウトブレイクが認められた都市は,認めなかった都市と比較すると,グラフが示すように密に集団となっていた(Figure 3.また,気温とQの関連は,コミュニティに広範に感染が拡大した都市と拡大しなかった都市を比較した場合(それぞれp= 0.003, p= 0.01)(Figure 4A, 4B),および自国の総症例数を感染が発生した他の都市あるいは発生しなかった都市と比較した場合(それぞれ,R2=0.26, p< 0.001; R2=0.25, Pp< 0.001)(Figure 4D, 4E),統計学的に有意であったRHとの関連は認められなかった(それぞれp=0.14, p=0.11)(Figure 4C, 4F

温度と緯度が同様の地域間の時間的な広がりを考えると,2020年の3月と4月のCOVID-19の潜在的な感染の拡大について,暫定的にいくつかの推定を行うことができた.3月と4月における2019年の気温と湿度のデータを用いると,コミュニティにおける感染拡大リスクは,現在のリスク地域よりも北側の地域に影響を及ぼすと予想される(Figure 5.これらの地域には,(東から西へ)満州,中央アジア,コーカサス,東ヨーロッパ,中央ヨーロッパ,英国,米国北東部および中西部,そしてブリティッシュコロンビア州が含まれる可能性がある.

Discussion

COVID-19の広範なコミュニティにおけるアウトブレイクの分布は,限定された緯度,温度、湿度の測定値に沿っており,季節性呼吸器ウイルスのふるまいと一致していたCOVID-19 が広がった都市の気温と湿度の関係は特に注目に値する.感染が広がった都市の平均気温(511℃)相対湿度RH44%〜84%)の測定値と,コロナウイルスの生存を促す既知の実験条件(4℃,20%〜80RH)には類似性がある.この論文の執筆時点では,ドイツとイギリスの一部の地域が新たなアウトブレイクの中心となっており,これらの地域はすべて,20201月から2月の平均気温が511℃であり,20201月から2月のリスクマップ(Figure 2),または3月から4月のリスクマップ(Figure 5)のいずれかに含まれていた.

温度と湿度は,SARS-CoVMERS-CoV,およびインフルエンザの生存の要因として知られている.さらに,これらの温度帯で長期間にわたって新たなアウトブレイクが発生しており,この温度の条件が長くなるとアウトブレイクのリスクが高まると考えられる.ウイルスの半減期および生存を延長する可能性に加えて、低温および低湿度に関連する他の可能性のあるメカニズムには,他の呼吸器ウイルスで実証されているように,飛沫の安定化,鼻粘膜における増殖の促進,および局所の自然免疫の低下などが挙げられる.より北緯に存在する寒い地域では,COVID-19の発生が相対的に少ないことに注目すべきである.これは,ウイルスの生存やその他の要因に影響を与えうる凍結融解サイクル(freeze-thaw cycles)を避けているためかもしれない.ほとんどの研究ではRHに焦点を当てているが,これは温度の影響を受ける可能性があるため,この変数を調節するために比湿Q(絶対湿度の指標)を用いる.低いQが,実験室におけるインフルエンザ感染,米国における季節性インフルエンザの発症に重要な要因であることが示されている

3月から5月にかけて北半球の多くの地域で気温が劇的に上昇し,我々の簡易モデルによると多くの地域が危険にさらされる可能性がある.しかし、現在のモデルでは気温や比湿の予測を考慮していない.現在の危険地域と重なる北方の地域では,急激に気温が上昇するため(ただし,米国北西部やブリティッシュコロンビア州のような地域は例外で,年間平均気温下限が長期間続く可能性がある),一過性のものとなる可能性がある.ウイルスがさらに北方へ広がると,順次,人口密度の低い地域へ移行していくことになる.これらの要因は,気候変動要因(例:雲量,最高気温),人的要因(例:公衆衛生上の介入の影響,クルーズ船や旅行などに伴うアウトブレイク),ウイルス要因(例:突然変異率,病原性)が考慮・分析されていないことから,緯度,気温,湿度との関連は強いようであるが,直接的な因果関係は証明されておらず,近い将来の推定値は細心の注意を払って検討する必要があることが示唆している.

ヒトコロナウイルス(HCoV 229EHCoV HKU1HCoV NL63,およびHCoV OC43)は,通常の風邪症状の原因となり,12月から4月の冬季に流行し,北半球の温帯地域では夏季には検出されない.αコロナウイルスHCoV 229Eは秋にピークを迎え,HCoV OC43SARS-CoV-2と同属のβコロナウイルス)は冬に優勢であることが示されている.しかし,SARS-CoV-2がヒトに感染して間もないことを考えると,おそらく既存の免疫はないと考えられる.

今後数年間のSARS-CoV-2ウイルスの感染拡大は様々なパターンをたどる可能性があり,低レベルで流行したり,インフルエンザのように熱帯地域でいくつかの季節的なピークが生じる可能性がある.もう一つの可能性としては,2003年のSARS-CoVのように,公衆衛生への集中的な取り組みの効果もあり,熱帯・南半球の夏季には持続できずに消滅する可能性があるが,世界的に症例数が増加していることから,その可能性は低いだろう.MERS-CoVは季節を問わず流行するβコロナウイルスと考えられている.しかし,MERS-CoV感染者の多くはアラビア半島で認められ,そこでのインフルエンザ感染は温帯地域のようなパターンではないことを忘れてはならない.北半球においては,これから夏に向けて,現在感染している地域でのSARS-CoV-2のサーベイランス活動が,ウイルスの感染源(例えば,便には長期にわたり排出される)を判断する上で重要になる.同様に,熱帯地域だけでなく,ニュージーランド,オーストラリア,南アフリカ,アルゼンチン,チリにおける6月から9月の間のサーベイランス活動は,ヒト母集団への定着を調査する上で価値があるかもしれない.

さらなる研究のためには,気候や気象のプロセスや変数(例えば,温度や湿度のダイナミクス)とその時間・空間的な変化を組み入れたり,人間の相互作用(例えば,移動や人口密度による感染)のシナリオをシミュレートしたりすることができるような,疫学-地球-人間システム統合モデルまたは連成モデルを構築することが大切である.

Conclusions and Relevance

限定された緯度,温度,湿度の測定値に沿ったCOVID-19アウトブレイクの分布は,季節性呼吸器ウイルスのふるまいと一致していた.気象モデルを用いることで,今後数週間におけるCOVID-19アウトブレイクのリスクが最も高い地域を推定することが可能となる.

 

 

Figure 1: World Temperature Map, November 2018 to March 2019

Color gradient indicates 2-m temperatures. Black circles represent countries with substantial community transmission (ie, ≥10 deaths as of March 10, 2020). Image from Climate Reanalyzer.18

 

Figure 2: World Temperature Map, January 2020 to February 2020

Color gradient indicates 2-m temperatures, based on data from the European Centre for Medium-Range Weather Forecasts ERA-5 reanalysis. White circles represent countries with substantial community transmission (ie, ≥10 deaths as of March 10, 2020), and red isolines indicate areas with temperatures between 5 and 11 °C. Generated using Copernicus Climate Change Service Information 2020.

 

Figure 3: Temperature vs Humidity Plot for 50 Cities With and Without COVID-19

Temperatures and specific humidity are mean values obtained from cities between 20 and 30 days before first community death for cities with substantial community outbreaks of COVID-19. Other cities with and without COVID-19 outbreaks were similarly analyzed, with benchmarks being first community spread–related death (when available) or last day of data collection (March 10, 2020). Orange circles represent countries with substantial community transmission (≥10 deaths as of March 10, 2020), and circle size represents total cases in each country. eTable 2 in the Supplement has characteristics of the 50 cities included.

 

 

Figure 4: Comparison of Mean Temperature and Humidity Between Cities and Countries With COVID-19

A-C, Mean 2-m temperature, mean specific humidity, and mean relative humidity were compared with the Mann-Whitney test between cities with and without substantial community transmission. Dots indicate values for cities with nonsubstantial transmission, and squares indicate values for cities with substantial transmission. Substantial community transmission was defined as at least 10 reported deaths in a country as of March 10, 2020. D-F, mean 2-m temperature, mean humidity, and mean relative humidity in representative cities were analyzed by linear regression against log of total cases in 50 different countries with and without COVID-19 (eTable 2 in the Supplement). Countries with 0 cases were assigned 0.5 cases. Circles represent values from individual cities.

 

 

Figure 5:  World 2-m Mean Temperature Map, March to April 2019, Estimating At-Risk Zone for March to April 2020

Color gradient indicates mean 2-m temperatures, except neon green band, which shows a zone with temperatures between 5 and 11 °C and specific humidity between 3 and 6 g/kg. The tentative zone at risk for substantial community spread in the near term includes land areas within the neon green bands and will change based on actual mean temperatures during this period and other factors. Image from Climate Reanalyzer.18