COVID-19関連追加(202071日)

 

【アメリカ全土,ニューヨーク州における小児の多系統炎症症候群】

58日,517日に追加,2編+2編(図表のみ).

 

(1)Feldstein LR, et al. Multisystem Inflammatory Syndrome in U.S. Children and Adolescents. N Engl J Med. June 29, 2020. doi: 10.1056/NEJMoa2021680.

BACKGROUND

小児における多系統炎症症候群(MIS-C疫学臨床経過の理解,およびCovid-19との時間的関連性を理解することは,同症候群の臨床的および公衆衛生上の影響を考えると,重要である.20204月下旬に,英国においてRiphagenらは,心原性ショック,発熱,および過剰炎症状態を呈する,生来健康であった小児8例を報告した(※58日,517日のファイルを参照)2020514日,米国疾病対策予防センター(CDC)は,小児の多系統炎症症候群(MIS-C)の基準を満たす症例を報告するように国家保健勧告(national health advisory)を出した.これまでの報告では,この症候群の小児患者の多くは,冠動脈瘤を引き起こす可能性のある小児期のまれな血管炎である川崎病に類似した発熱と粘膜症状が認められる.患者の中には,トキシックショック症候群,二次性血球貪食性リンパ組織球症,あるいはマクロファージ活性化症候群を呈しているものも認められる.川崎病の原因は明らかになっていないが,MIS-Cは,川崎病と同様に,様々な臨床症状を呈し,病理学的所見や診断検査が存在しない症候群である.しかし,川崎病とは異なり,初期の報告では,MIS-Cは,主に5歳以上の小児および青年期に発症し,心血管合併症の頻度が高いことが示されているMIS-Cの疫学,疾患の概要,臨床経過,治療法,予後を明らかにすることは,罹患率と死亡率を減らすための鍵となる.20204月,米国CDCは小児および青年期における重症Covid-19のサーベイランスを開始した(the Overcoming COVID-19 study).この報告では,26の州におけるthe Overcoming COVID-19 studyおよびCDCに報告されたMIS-C 186例の疫学と臨床的特徴を総括した

METHODS

2020315日から520日にかけて,米国全土の小児医療センターを対象に,MIS-Cの対象限定サーベイランスを実施した.診断基準には以下の6項目を含む:入院が必要な重篤な状態,21歳未満,少なくとも24時間は続く発熱,炎症の臨床検査所見,多臓器障害,そしてRT-PCR検査,血清抗体検査でSARS-CoV-2感染の証明,あるいは過去1ヶ月間のCovid-19感染者への曝露.臨床医はデータを標準化された形式に要約した.

RESULTS

CASE-DEFINING, DEMOGRAPHIC, AND CLINICAL CHARACTERISTICS

この報告に含まれるMIS-C患者186Figure 1A)のうち,316日〜415日に入院した患者は22人(12%),416日〜520日に入院した患者は164人(88%)であり,MIS-C の発症率のピークは, Covid-19のピークを過ぎた時期に起こっていたFigure 1B

 

Figure 1: Geographic and Temporal Representation of Cases of Multisystem Inflammatory Syndrome in Children (MIS-C).

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大多数の患者(131人[70%])は,RT-PCR検査,抗体検査またはその両方でSARS-CoV-2 感染と診断され,55人(30%)はCovid-19感染者と疫学的な接点があった(Table 1).MIS-C が発症する前にCovid-19 の症状を認めていた患者14人のうち,Covid-19 の症状が発症してからMIS-Cの症状が発症するまでの期間は,median 25日間(range, 6-51であった患者の年齢はmedian 8.3歳(IQR, 3.3-12.5であり,115人(62%)が男性,135人(73%)は生来健康であった全体では,患者35人(19%)が非ヒスパニック系白人,46人(25%)が非ヒスパニック系黒人,9人(5%)が他の人種で非ヒスパニック系,57人(31%)がヒスパニック系あるいはラテン系,41人(22%)が人種は不明であった

 

Table 1:

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CLINICAL CHARACTERISTICS AND TREATMENT

ほとんどの患者(132 [71%])は少なくとも4つの臓器障害を伴っていた(Table 1).最も障害が認められた臓器系は,消化器系171 [92%]),心血管系149 [80%]),血液系142 [76%]),粘膜・皮膚系137 [74%]),そして呼吸器系131 [70%])であった(Figure 2ほとんどの患者(148 [80%])はICUで治療を受け,37人(20%)は侵襲的人工呼吸管理を受けていた8人(4%)はECMO管理を受けていた.2020520日時点で,合計130人(70%)は(生存して)退院した52人(28%)はまだ入院しており,4人(2%)が死亡した入院期間は,退院した患者ではmedian 7日(IQR, 4-10,死亡した患者ではmedian 5日(IQR, 2-5であった死亡した4人の患者は,1016歳でありうち2人は基礎疾患を有しており3人はECMO管理を受けていた

MIS-C患者では,167人中131人(78%)に5日以上の発熱151人(90%)に4日以上の発熱を認めた.全体では,患者74例(40%)は少なくとも5日以上続く発熱を認め,(1) 45つの川崎病様の症状,あるいは(2) 23つの川崎病様の症状と臨床検査あるいは心臓超音波所見を呈していた(Table 2).

これら2群における治療は,免疫グロブリン静脈投与が最も一般的であった(それぞれ100%, 97% vs 他の患者では63%患者のほぼ半数(91 [49%])がグルココルチコイドの投与を受け14人(8%)がIL-6阻害薬(tocilizumabあるいはsiltuximab),24人(13%)がIL-1 Ra阻害薬(anakinra)の投与を受けていた(Table 2).

 

 

Table 2:

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ORGAN INVOLVEMENT AND INFLAMMATORY MARKERS

心血管病変は一般的であり(149[80])(Figure 2A),90人(48%)が昇圧薬による支持療法を受けていた.大多数の患者ではBNPが上昇しており(128人中94人[73%]),50%153人中77人)ではトロポニンが上昇していた.ほとんどの患者(170[91])が少なくとも1回の心臓超音波検査を受けていた.左前下行枝または右冠動脈にz-score2.5以上である冠動脈瘤が患者の8186人中15人)に,心臓超音波検査を受けた患者の9170人中15人)に認められた呼吸不全は109人(59%)に認められた(Figure 2B;これらの患者のうち85例(78%)には呼吸器の基礎疾患はなかった.全体では,37人(20%)の患者が侵襲的人工呼吸管理を受け,32人(17%)が非侵襲的人工呼吸管理を受けていた.

ほとんどの患者(171 [92])は,炎症を示す4つ以上の臨床検査におけるバイオマーカーの異常値を示した赤沈亢進またはCRP上昇リンパ球減少症好中球増加フェリチン増加アルブミン低下ALT上昇貧血血小板減少,およびDダイマー上昇PT-INR延長,またはフィブリノーゲン上昇が認められた(Figure 3).

 

Figure 2: Organ-System Involvement in Patients with MIS-C.

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DISCUSSION

米国全土におけるSARS-CoV-2感染に関連したMIS-Cの基準を満たした21歳未満の患者186人を報告した.大多数(70%)の患者は,検査によってSARS-CoV-2感染の既往または同時感染が確認されており,ほとんどの患者に基礎疾患を認めなかった心血管病変がコモンであり,ほぼ半数の患者が血管調節薬または血管作動薬の投与を受けており,12人に1人が冠動脈瘤を有していたほとんどの患者はICUで治療され20%の患者が侵襲的人工呼吸器管理を受けていたほとんどの患者は(生存して)退院したが2020520日時点で,28%はまだ入院しており,4人(2%)が死亡した(そのうち2人は生来健康であった).

患者の約1/3SARS-CoV-2 PCRは陰性であったが,血清抗体が検出された.少人数の検討であるが,Covid-19発症からMIS-Cで入院するまでの期間は,median 25日間であったと報告されている.因果関係を確立するためには十分ではないものの,これらの知見からMIS-C発症から少なくとも12週間前にSARS-CoV-2に感染していたことが示唆される.

これらの患者は米国CDCのよって作成された鋭敏な診断基準に合致する.患者の1/3以上が川崎病様の臨床的特徴を呈していたが,患者の60%は完全型あるいは不全型川崎病の診断基準を満たしていなかった川崎病に類似した特徴を持つ患者は5歳未満の小児が多かったが,これは報告されている川崎病患者と同様であった.発熱,紅皮症,落屑などの川崎病様臨床所見の一部は,多臓器障害を呈し,他のウイルスとの関連も指摘されているトキシックショック症候群にも認められる.

川崎病もMIS-Cも心血管障害を認めることがあるが,心血管障害の性質はこの2つの症候群間で異なるようである.血管調節薬または血管作動薬の投与が必要であった重症なサブフェノタイプとしての心血管病変がよく観察されたが,これは年長の小児および青年期に最も認められた.米国の川崎病患者の約5%が昇圧薬あるいは強心薬を必要とする心原性ショックを併発すると報告されているが,我々の検討における症例では50%に心原性ショックを認めた心筋機能障害Covid-19の激しい肺外症状であり,成人の死亡率の増加と関連している.冠動脈瘤は川崎病によくみられる特徴であり、発症後21日以内に約1/4の患者に認められる我々の症例では,左前下行枝または右冠動脈の最大z-score2.5以上であった冠動脈瘤は,全体では8%,心臓超音波検査を行った患者では9%であった.しかし,退院後の冠動脈のサイズ変化を評価することができなかった.生来健康な若年成人において致死的あるいは非致死的な心筋梗塞の原因として,小児期に川崎病に罹患していたことが未診断であった可能性が挙げられている.しかし,川崎病の臨床所見を認めない患者もおり、MIS-Cを呈したすべての患者に心エコー検査を行うことの重要性が強調されるMIS-Cの長期的な心臓の後遺症についての詳細が明らかになるまでは,川崎病のガイドラインに沿ったフォローアップを検討してもよいだろうMIS-Cのその他の後遺症に対しても,長期的なモニタリングを行うことが重要であろう.

MIS-Cの病態を理解することは,臨床的な管理と予防のために必要である.我々の症例では,患者の大部分が免疫調節薬による治療を受けており,その中でも最も多いのは免疫グロブリン静脈内投与(77%)グルココルチコイドの全身投与(49%)であった.我々の研究は,いずれの治療法の長期的な有効性を評価したり,比較したりすることを目的としたものではなかったが,退院した患者のほとんどは生存していた.候補となる治療選択は,臓器障害が組織において継続的なウイルス複製が影響しているのか,宿主の過剰な炎症反応が影響しているのか,あるいはその両方が影響しているのかを考慮して行わなければならない.過剰炎症状態を示唆する臨床および検査所見,SARS-CoV-2感染に関連した発症時期,そして成人Covid-19患者の疾患パターンとの類似性を考慮すると,MIS-CSARS-CoV-2感染によって引き起こされた免疫介在性傷害の結果であるという仮説が支持される.

利用できるデータによると,MIS-Cは小児および青年期におけるSARS-CoV-2感染の稀な合併症であることが示唆されているが,本質的な問題は,なぜこの年齢層でMIS-Cが発症し,他の年齢層では発症しないのかということである.MIS-C発症の年齢特異的な違いは,SARS-CoV-2感染曝露の感受性の違いや,SARS-CoV-2が細胞侵入のために利用する受容体であるACE2の鼻腔内発現の違いで説明できる可能性がある.ロンドンにおけるMIS-C症例では,患者8人のうち5人が黒人あるいはアフロカリビアンであった.我々の症例における黒人またはヒスパニック系の割合は,米国の人口全体の割合よりも高く,米国の人口全体における017歳のCovid-19患者の黒人またはヒスパニック系の子供の割合と同様であった.川崎病への感受性と治療への反応は,シグナル伝達経路や遺伝的変異と同様に,腸内バイオームの影響を受けている可能性がある.MIS-C発症の潜在的な決定因子を特定するためには,潜在的な宿主因子の探索も必要である.

MIS-C症例数は,3月よりも4月の方が多かった.Covid-19の流行の下降期に,各国からのMIS-C症例の報告が相次いだことから,サーベイランス期間の後半におけるMIS-Cの検出率の増加は,コミュニティ感染拡大の増加というよりも,感染後の遅発性発症を反映していることを示唆している.驚くべきことに,中国で発生したMIS-Cに類似した疾患の報告は少なく,中国でのCovid-19で入院した小児の報告のほとんどは,彼らが重症ではないことを示している.この理由は不明であり,小児の感染率の違い,宿主因子,免疫調節薬による早期治療,あるいは不十分である報告などが関係しているかもしれない.

Limitation: MIS-C診断基準は鋭敏であることを意図したものであったため,診断の漏れが生じる可能性があったこと,MIS-C症例は各州の病院からの報告であり,この結果は調査の母集団を超えて一般化することはできないこと,冠動脈瘤に関しての臨床転帰,心臓超音波検査の詳細なレポートなど,特定の変数を完全に把握できていない可能性があること, カルテ記録からのretrospectiveな調査であり,SARS-CoV-2感染の発症時期や検査における偽陰性の影響を正確に評価することができず,さらに便を含む非呼吸器検体を検査することができなかったこと,SARS-CoV-2検査の陽性率に関する州全体がプールしている結果は,参加病院の集団における検査陽性率またはCovid-19の発生率を正確に反映していない可能性があること,報告の重複を避けるために,ニューヨーク州保健局の報告書に含まれていた27人の患者を除外したため,影響が生じた可能性があること,など.

CONCLUSIONS

SARS-CoV-2感染に関連した小児の多系統炎症症候群は,生来健康だった小児や青年に重篤で生命を脅かす可能性がある.

 

 

(2)Dufort EM, et al. Multisystem Inflammatory Syndrome in Children in New York State. N Engl J Med. June 29, 2020. doi: 10.1056/NEJMoa2021756.

BACKGROUND

小児の多系統炎症症候群(MIS-C: multisystem inflammatory syndrome in childrenCOVID-19と関連がある.ニューヨーク州保健局(NYSDOH)は,同症候群の入院患者の特徴を調査するために,積極的な州全体のサーベイランスを確立した.

METHODS

ニューヨーク州の病院は,21 歳未満の入院患者における,川崎病,トキシックショック症候群,心筋炎,そしてMIS-C の可能性がある症例を報告し,NYSDOHにカルテ記録を送付した.我々は,202031日から510日の期間でNYSDOHにおけるMIS-Cの定義を満たした患者の臨床症状,合併症,転帰をまとめた記述的分析を行った.

RESULTS

STUDY POPULATION AND SARS-COV-2 TESTING

202031日から510日まで,21歳未満の入院患者についてNYSDOHに提出された報告書は191人であり,その中でMIS-Cの暫定的診断基準を満たしていたのは99人であった;95人(96%)が確定症例,4人(4%)が疑い症例.99人中,29人(29%)が低血圧あるいはショック,重篤な心疾患,その他の重篤な内臓疾患のうち1つ以上,6例(6%)が発疹,結膜炎,粘膜病変,消化器症状のうち2つ以上,そして64例(65%)が両方の臨床基準を満たしていた.この期間,確定診断をうけた患者95人の患者のうち,94人(99%)がRT-PCR検査を受け,77人(81%)が血清抗体の有無を検査した.19人(20%)がRT-PCRのみ陽性45人(47%)が血清抗体検査のみ陽性(うち1人はRT-PCR検査を受けていない)、31人(33%)がRT-PCRと血清抗体のどちらも陽性であったIgG抗体検査を受けた77人の患者のうち,76人(99%)が陽性であったIgA陽性は3人,IgM陽性は3人,21人はIgMが陰性であった.IgMまたはIgA陽性のみの患者はいなかったSARS-CoV-2血清抗体を有する76人の患者のうち,40人(53%)が入院前または入院初日にIgG陽性であった

疑い例4人の患者は全員がPCR検査は陰性であり,血清抗体検査を受けた患者はいなかった.2例(50%)はMIS-Cを発症する6週間前にCovid-19様症状を認めていた.確定症例と疑い症例の特徴は類似していたため(データは示されていない),2つのグループを組み合わせて解析を行った.

 

CHARACTERISTICS OF THE PATIENTS

MIS-C患者99人のうち,53人(54%)は男性であった.05歳が31人(31%)612歳が42人(42%)1320歳が26人(26%)であった(Table 1).人種に関するデータがある患者78人中,白人は29人(37%)黒人は31人(40%)アジア人は4人(5%),その他の人種14人(18%)であり,民族に関するデータがある患者85人中,31人(36%)がヒスパニック系であった(Table 2).基礎疾患がある36人の患者のうち,29人に肥満を認めた入院時,すべての患者に発熱または悪寒を認めた.その他の一般的な症状は,消化器症状(80%)皮膚症状(62%)粘膜症状(61%),下気道症状(40%)であった合計60人の患者(61%)に消化器症状と皮膚症状または粘膜症状がみられた.年齢層別の症状の分類をFigure 1に示す.神経学的症状,主に頭痛05歳の患者の13%,1320歳の患者の38%に認められた川崎病あるいは非定型川崎病を呈していたのは,05歳では48%、612歳では43%であったが,1320歳では12であった

 

Table 1:

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Table 2:

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Figure 1: Syndrome Clusters According to Age Group among Patients with Multisystem Inflammatory Syndrome in Children (MIS-C).

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ある新生児の疑い例(出産時に母親が無症候性の SARS-CoV-2感染症であった)が,生後 1428日目に発熱と左乳房蜂窩織炎を呈した.臨床検査ではトロポニン値の上昇(10時間で,43 ng/lから51 ng/lに上昇)が認められたが,心臓超音波検査では心室機能は良好で,冠動脈に異常は認められなかった.SARS-CoV-2 PCRおよび血清抗体検査は陰性であった.退院時の診断は、蜂窩織炎、心筋炎、そしてショックであった.

ある妊娠2326週の青年期の女性(確定症例と分類)が発熱,頭痛,そして胸痛を訴えて入院した.低血圧を呈しており,臨床検査ではトロポニンおよびその他の炎症性マーカーの上昇が認められた.退院診断はARDS,心膜炎,そして肺炎であった.

 

入院時,63%38.0℃以上の発熱97%は頻脈78%は頻呼吸32%は低血圧を認めた(Table 3).入院時のmedian体温38.3median酸素飽和度98であったMIS-Cが疑われた患者または確定患者のうち,mean白血球数10400/μlであり,89人中59人(66%)にリンパ球減少が認められた82人中74人(90%)はpro-BNPが上昇し,89人中63人(71%)はトロポニンが上昇し,98人のうち全員にCRPの上昇を認め,94人中86人(91%)はDダイマーが上昇していた(Table 3.入院時の臨床所見および検査所見を年齢層別にTable 2Table 3に示す.

 

 

Table 3:

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ANTECEDENT ILLNESS AND VIRAL AND BACTERIAL TESTING ON ADMISSION

入院6週間前においてMIS-C患者99 人のうち,Covid-19に矛盾しない症状を認めていたのは24人(24%であり入院前の有症状期間はmedian 21日間(IQR, 10-31Covid-19感染者からの曝露が38人(38%),臨床的なCovid-19疑い例との直接接触が22人(22%)であった.インフルエンザABを含む呼吸器ウイルス,およびRSウイルス検査は,57人の患者(58%)に施行された.呼吸器ウイルス検査が施行された患者57人のうち,2人にこれらのウイルス感染の共感染が認められた:コロナウイルス229eおよびSARS-CoV-21人の患者で検出され,アデノウイルス,一般的なコロナウイルスおよびSARS-CoV-21人の患者で検出された.77人(78%)の患者で細菌培養が行われたが,菌血症を示した患者はいなかった.合計71人(72%)の患者がエンピリックな全身への抗菌薬治療を受けていた.

 

CLINICAL COURSE, TREATMENT, AND OUTCOMES

79人(80%)の患者がICUに入院した(入院から ICU 入室までの期間はmedian 1日未満; IQR, 0-1).そして10人(10%)が人工呼吸管理を受けた.症状発症から入院までの期間はmedian 4日(IQR, 3-6)であった(Table 4).合計69人(70%)の患者に免疫グロブリン(IVIG)静脈内投与が行われ,63人(64%)にグルココルチコイドの全身投与が行われ,61人(62%)に昇圧薬の投与が行われた;48人(48%)はグルココルチコイドとIVIG の両方が投与された.入院中に患者93人(94%)は,少なくとも1回の心臓超音波検査を受けた;51人(52%)にはある程度の心室機能障害が認められ,32人(32%)には心嚢液貯留があり,9人(9%)には冠動脈瘤が認められた.冠動脈瘤を有する9人のうち7人でZスコアが報告されており,4人(57%)で2.5以上5未満のスコアであった.トロポニンおよびpro-BNP,心電図,心臓超音波検査を受けた60人中59人に心臓の異常が認められた胸部CTまたはレントゲン検査を受けた患者90人のうち,35人(39%)に少なくとも1つの陰影が認められた腹部CT腹部超音波検査,またはその両方を受けた患者44人のうち,34人(77%)に異常所見が認められた4人(9%)に肝腫大,脾腫大または肝脾腫大,8人(18%)に腸間膜リンパ節腫大,16人(36%)に腹水,胸水または骨盤液,17人(39%)に虫垂(2人)または胆嚢(5人)の炎症または肥大,腸炎(3人),腸壁肥厚(7人),あるいはイレウス(fluid-filled bowel loops)(4人)が認められた.

 

合計36人の患者(36%)が川崎病または非定型(または不全型)川崎病の診断を受けた;冠動脈瘤を認めた患者9人のうち7人が川崎病の診断を受けた.合計36人(36%)の患者が心筋炎の診断を受け,さらに16人(16%)が臨床的に心筋炎を認めた.515日時点で,合計76人(77%)の患者が退院し21人(21%)がまだ入院中であり2人(2%)が死亡した入院期間は全体でmedian 6日(IQR, 4-8,退院した患者でmedian 6日(IQR, 4-8),死亡例でmedian 7日(IQR, 3-11であった.

 

死亡したのは012歳の2人であった2人とも腹痛と発熱を訴えて入院し,来院時に頻脈と低血圧を呈し,入院中に昇圧薬の投与と気管内挿管を施された;1人はECMOが施行された.いずれもIVIG,全身性グルココルチコイド,免疫調節薬の投与は受けていなかった.両者の死因には,炎症性,凝固異常,または神経合併症と考えられた.

 

Table 4:

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EPIDEMIC CURVE

ニューヨーク州における21歳未満のSARS-CoV-2感染確定例の検体採取日と,本研究におけるMIS-C確定例および疑い例の入院日の推移をFigure 2に示す.MIS-C症例数のピークは,SARS-CoV-2感染確定例数のピークに遅れること,31日間であることがわかる202031日から510日における,SARS-CoV-2感染症の発症率は21歳未満10万人あたり322人(0.32%MIS-Cの発症率は21歳未満10万人あたり2人(0.002%であった.

 

Figure 2: Pediatric Cases of Coronavirus Disease 2019 (Covid-19) and of MIS-C.

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Discussion

ニューヨーク州に入院した MIS-C の小児患者は,心機能障害を伴う皮膚,粘膜,消化器症状を伴う発熱性高炎症性症候群を呈しており,現在この症候群は世界的に観察されるようになっている.患者の32%は入院時に低血圧を呈していたが,62%(05歳の48%)は昇圧薬の投与を受け,80%はICUに入院した注目すべき所見は,軽度の呼吸器症状と臨時的な酸素療法の施行を伴い,心機能障害,あるいは抑うつ凝固異常,そして消化器症状が高頻度に認められ,入院した多くの小児の急性Covid-19症例とは対照的であったことである.通常,患者は,IVIGグルココルチコイド,および昇圧薬で治療された.この集団は,炎症性血管障害の存在を示唆しており,川崎病やトキシックショック症候群との類似性がある.この報告は,これまでの症例報告,短期報告,小規模なケースシリーズに限られていた報告に一致している.

イタリアからの報告のように,ニューヨーク州におけるMIS-C症例は,この地域のCovid-19流行のピークに続いて認められた.血清抗体検査を受けた患者はほぼ全員が陽性反応を示しRT-PCR 検査と血清抗体検査の両方を受けた76人のうち44人(58%)は抗体検査のみ陽性であった(これは現在あるいは過去のSARS-CoV-2感染を意味する).SARS-CoV-2感染が疑われた4人のうち,入院時にSARS-CoV-2感染の証拠を認めた患者はいなかった,2人(50%)はMIS-Cが発症する6週間前はCovid-19様の症状を認めていた.これらの所見から,MIS-CはおそらくはCovid-19に関連した感染後の炎症プロセスであることを支持するものである

年齢に応じて症状や合併症にばらつきが認められた.皮膚症状の有病率は05歳児が最も高く心筋炎の有病率(確定診断および臨床的診断)は青年期が最も高かった消化器症状の有病率は全年齢層で高かった.退院後に川崎病あるいは非典型的川崎病の診断をされたのは,MIS-Cを発症した05歳児の約半数であったが,1320歳の青年期では12%にとどまっていた。MIS-C012歳児は,MIS-Cの青年期に比べて,結膜充血,発疹,口腔粘膜変化などの川崎病様症状を呈していた.そして,以前の報告にあるような川崎病の小児に比べると,本研究で川崎病様症状を呈した012歳児は,より年長であり,低血圧を認め,ICUへの入院が多かった.MIS-Cの年少児に比べて,川崎病様症状は青年期の方が少ないものの,それでも川崎病様症状は認められ,成人における川崎病の稀な症例も報告されている.さらなる研究が,成人においてもSARS-CoV-2感染後炎症症候群が存在するのかどうかを明らかにするだろう.

古典的な川崎病はアジアの小児に不均一に発症するが,Covid-19に関連したMIS-Cはあらゆる人種・民族の小児に発症しているようだ.この研究における主にニューヨーク州中心地における患者は,黒人が40%ヒスパニック系が36%であった.これは,黒人およびヒスパニック系のコミュニティにおいてSARS-CoV-2感染の発生率が高くなっていることを反映している可能性がある.

Limitation: 入院を伴わなかった軽度のMIS-C症例,および新しい症候群の認識不足による過少報告による,過小評価が存在した可能性がある.さらに、臨床医は炎症性マーカーの完全な項目をオーダーしていない可能性がある.重症の急性Covid-19の小児患者において,同時に炎症性症候群を併発していた場合は,MIS-Cの定義に合致していたが,含まなかった可能性がある.さらに流行初期には血清抗体検査が開発されていなかったこと,その利用の可能性が限られていたこと,小児科医の認識不足が存在していた可能性がある.ウイルス学的な基準を満たしていない患者は,特にSARS-CoV-2感染が拡大していない地域では,ベースラインで川崎病を発症している患者であった可能性がある.MIS-C の診断基準に関して,開発会社によるPCR 検査と血清抗体検査の感度,特異度が異なっている可能性がある.我々は,川崎病,非定型川崎病,トキシックショック症候群の診断を独自に検証することはできなかった.

CONCLUSIONS

ほとんどの小児において,SARS-CoV-2感染による症状は軽症,あるいは無症状だが,MIS-C は症状の有無に関係なくSARS-CoV-2感染に続発する可能性がある.この症候群を認識し,早期に血圧をモニターし,心電図および心エコーなどを用いて,MIS-C患者の早期発見を行うことが大切である.

小児のCovid-19は軽症であることが多く,成人に比べて検査を受ける機会が少ないため,SARS-CoV-2に感染した小児におけるMIS-C発症率は明らかになっていない.特に SARS-CoV-2の有病率が高い地域社会においては,MIS-C症例のサーベイランスを確立することが重要である.

 

(3)Belot A, et al. SARS-CoV-2-related paediatric inflammatory multisystem syndrome, an epidemiological study, France, 1 March to 17 May 2020. Eurosurveillance.

 

Figure 2: Temporal distribution of COVID-19 hospitalisations and SARS-CoV2 hyperinflammatory paediatric cases, France, 2 March–17 May (n=108)

Figure 2

 

 

Figure 4: Age distribution of paediatric inflammatory multisystem syndrome patients, France, 1 March–17 May (n=108)

Figure 4

 

Figure 5: Venn diagram of clinical features of SARS-CoV-2-related paediatric inflammatory multisystem syndrome, France, 1 March–17 May (n=108)

Figure 5

(4)Belhadjer Z, et al. Acute heart failure in multisystem inflammatory syndrome in children (MIS-C) in the context of global SARS-CoV-2 pandemic. Circulation. May 17, 2020.

https://doi.org/10.1161/CIRCULATIONAHA.120.048360.