COVID-19関連追加(202072日)

 

【欧州の小児と青年期におけるCOVID-19

Gӧtzinger F, et al. COVID-19 in children and adolescents in Europe: a multinational, multicenter cohort study. Lancet Child Adolesc Health. June 25, 2020.

https://doi.org/10.1016/S2352-4642(20)30177-2.

Background

これまで小児のCOVID-19に関するデータの報告は少なく,多くの報告は中国からのものである.この研究は,パンデミックが収束しない中,医療者に情報を提供するために、欧州全域のSARS-CoV-2感染症の小児および青年期に関する重要な情報を収集することが目的である.

Methods

この多施設コホート研究では,小児感染症専門医と小児呼吸器専門医を中心とした研究ネットワーク「the Paediatric Tuberculosis Tuberculosis Network European Trials Groupptbnet)」を利用して,欧州25カ国の82の医療機関が参加した(Figure 1).欧州の COVID-19 パンデミックの初期のピークであった202041日〜424日の期間において,様々な部位のRT-PCR 検査でSARS-CoV-2 感染が確認された18歳以下の患者を対象とした.COVID-19ICU入院と薬物治療の開始に関連する因子について単変量解析を用いて検討し,多変量ロジスティック回帰分析を用いたステップワイズ法を用いて,ICU入院と有意に関連する因子をさらに検討した.

Figure 1: Location of participating units and number of paediatric cases reported by country

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Results

対象はPCR検査にてSARS-CoV-2感染が確認された582であり,年齢はmedian 5.0IQR, 0.5-12.0),性別比は女性1人当たり男性1.15人であった.145人(25%)が基礎疾患を有していた.最も多かったのは慢性肺疾患(29人,その中で喘息16人,気管支肺異形成6人),次いで悪性腫瘍(27人,うち白血病あるいはリンパ腫14人,固形腫瘍11人)であった.その他は,神経疾患(26人,その中で,てんかん9名、脳性麻痺8人),先天性心疾患(25人),染色体異常(10人,その中でトリソミー218人),慢性腎臓病(9人)であった.17人(3%)は23以上の基礎疾患を有していた.発熱が最もよくみられる症状であり379人(65%に認められたおおよそ半数に上気道感染症状,約1/4に下気道感染症状が認められた胃腸症状128人(22%)に認められ,40人(7%)は呼吸器症状がなく,胃腸症状のみであった.92人(16%無症状であった

この研究の母集団におけるSARS-CoV-2感染がRT-PCRで確認された日付をFigure 3に示す.発症から診断まではmedian 2日間(IQR, 1-4; range, 0-23)であったが,大多数(392; 67%)では,3日間以上の間隔があくことはなかった8人は症状が現れる前に,SARS-CoV-2感染が確認されたが,おもにSARS-CoV-2陽性の母親から生まれた新生児,およびCOVID-19 が確認された症状のある人がいる家庭の一員であった.

Figure 3: Violin plot illustrating the dates SARS-CoV-2 infection was confirmed by RT-PCR in the study population, by country

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198人(34%)の患者に胸部X線検査が行われ,そのうち93人(47%)に肺炎の変化が認められた10人(5%)にARDSを示唆する変化がみられ,全員が人工呼吸管理を必要とした29人(5%)の患者の呼吸器検体からその他のウイルスが検出された:エンテロウイルスまたはライノウイルス(n=18),インフルエンザウイルス(n=5),パラインフルエンザウイルス(n=3),アデノウイルス(n=3),RSウイルス(n=2),ボカウイルス(n=2),およびコロナウイルス NL63,コロナウイルス HKU1,コロナウイルス OC43,およびヒトメタニューモウイルス(n=1)であった.22人においてSARS-CoV-2に加えて,1つのウイルスの共感染が認められた.さらに,複数のウイルス感染を認めた患者は,有意にICUへの入院呼吸器サポート強心薬サポートを必要としていた

363人(62%)が入院し,48人(8%)がICUへ入院した25人(4%)が人工呼吸管理(median 7日間; IQR, 2-11; range, 1-3419人(3%)が強心薬による支持療法1人(1%未満)にECMO管理が必要であった.

507人(87%)はどの段階でも呼吸器サポートを必要としなかった75人(13%)の患者が酸素サポートを必要とした.

ICUへの入院を必要とした患者は,ICUへの入院を必要としない患者に比べて若年であることがわかったが,これは統計的に有意ではなかった(Figure 2

Figure 2: Violin plots showing the age distribution of patients by requirement of ICU support

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単変量解析では,生後1ヶ月未満,男性,基礎疾患,発熱,下気道感染症の症状,肺炎またはARDSを示唆する放射線学的所見,および複数ウイルス感染がICU入院と関連していた

多変量解析では,ICU入院と関連があった因子は,1ヶ月未満の新生児(オッズ比[OR, 5.06; 95 CI, 1.72-14.87; p=0.0035男性(OR, 2.12; 95% CI, 1.06-4.21; p=0.033下気道感染症の症状(OR, 10.46; 95% CI, 5.16-21.23; p<0.0001,および基礎疾患(OR, 3.27; 95% CI, 1.67-6.42; p=0.0015であった

抗ウイルス薬で最も多く使用されたのはヒドロキシクロロキンで40例(7%)に使用され,次いでレムデシビルが17例(3%)に使用された.ロピナビル・リトナビルは6例(1%)に,オセルタミビルは3例(1%)に使用され,そのうち2例はインフルエンザウイルス感染症であった.3人(1%)の患者には抗ウイルス薬2剤を,1人(1%未満)の患者には3剤を投与した;4人の患者全員ともARDSを発症していた.クロロキン,ファビピラビル,ザナミビル,リバビリンの投与を受けた患者はいなかった.

免疫調節薬に関しては,22人(4%)の患者が全身性コルチコステロイド,7人(1%)が免疫グロブリン静注,4人(1%)がtocilizumab3人(1%)がanakinra1人(1%未満)がsiltuximabの投与を受けていた.単変量解析では,抗ウイルス薬または免疫調節薬の治療開始と関連する因子は,既往の悪性腫瘍(OR ,6.3; 95 CI, 2.8-14.2),心疾患(OR, 4.2, 95% CI, 1.8-10.0),または呼吸器疾患(OR, 6.5, 95% CI, 3.0-14.2)であった;登録時の免疫抑制療法(OR, 6.5; 95% CI, 3.0-14.2),または最近の化学療法(OR, 6.1; 95% CI, 2.6-14.1);肺炎(OR, 4.5, 95% CI, 2.3-8.6)またはARDSOR, 22.3; 95% CI, 2.7-180.5)を示唆する放射線学的所見;および複数ウイルス感染(OR, 5.5; 95% CI, 2.5-12.2;すべてp0.0001)であった

4人の患者はいずれも10歳以上で,致死的転帰(CFR 0.69%, 95CI 0.20-1.82)を示し,発症から3日後,9日後,11日後,17日後に死亡した.2人の患者は基礎疾患のない患者であった;1人は病院に到着する前に心肺停止であり蘇生できなかった.もう1人はICUで人工呼吸管理を受けたが死亡した.3人目の患者は15ヶ月前にヒト幹細胞移植を受けていた.4人目の患者は基礎疾患の重症度が高かったため,緩和ケアを受けていた(気管内挿管なし).それ以外の患者578人は研究終了時には生存していた.93人(16%)は無症状であった.460人(80%)は,明らかな後遺症もなくすべての症状が消失していたが,研究終了時には25人(4%)がまだ症状が残存していたか,呼吸器サポートを必要とした.

Discussion

・本研究は小児COVID-19患者に関する初の多国籍・多施設共同研究であり、中国以外の小児を対象とした臨床研究としてはこれまでで最大規模のものである。また参加した医療機関の多くが高度医療機関であり,この研究の母集団は主にこの疾患スペクトラムの中でも特に重症患者を反映しているかもしれない.

・我々のデータは,小児および青年期は,成人,特に高齢の患者よりもCOVID-19の重症度が低いことを示している.また免疫機構が未成熟であるにもかかわらず,乳児を含む幼児では重度のCOVID-19は稀であることが示されていることは安心できる.我々のコホートにおいて,死亡した小児はすべて10歳以上であったことは驚くべきことである.

発熱が主な臨床的特徴であった(それぞれ56%と54%に認められた).また約1/4の患者に消化器症状が認められ,そのうちの何人かは呼吸器症状がなく16%は無症状であった.

・我々のデータは,欧州全体の小児および青年期の致死率(CFR)は1%未満であることが示されている.軽症の子供たちの多くは,医療機関の診察を受けていないことを考えると,真のCFRはこの0.69%という数値よりもかなり低い可能性が高いと考えられる.

・我々のデータは,COVID-19に関連した後遺症は小児や青年期では稀である可能性が高いことを示している.しかしこの研究が終了した後,SARS-CoV-2感染と因果関係がある可能性がある小児の過剰炎症症候群の報告が出てきており,後に多系統炎症症候群(PIMS-TSあるいはMIS-Cと命名された.

・重要なことに,この研究によって,重症COVID-19は幼児と青年期のどちらでも認められ,これらの患者の多くが人工呼吸管理を含むICUのサポートを必要とすることが示された.また,1ヵ月未満の新生児男性下気道感染症の症状基礎疾患ICUへの入院の傾向と関連していた.加えて,呼吸不全のために気管内挿管された小児の大多数は,多くの場合1週間以上の長期にわたる人工呼吸管理を必要とすることも示された.

SARS-CoV-2と他のウイルスと複数感染している患者は,SARS-CoV-2のみに感染している患者よりもICUでの治療を必要としたRSウイルスやインフルエンザウイルス感染症を含む他のウイルス性呼吸器感染症の発症率が増加する2020-21年の冬期に向けて注意が必要である.

Conclusions

欧州全土の多数の専門センターから得られたデータによると,乳児を含む小児において,COVID-19は軽症であることが多い.それにもかかわらず,ごく一部の小児や青年期の患者は重症化してICUのサポートを必要とし,しばしば長期間の人工呼吸器管理を必要とすることがある.しかし,全体的に致死的な転帰は稀である.また特定の治療法は確立しておらず,抗ウイルス薬や免疫調節薬に関するより強固なデータが早急に必要である.