COVID-19関連追加(202192日)ワクチンブレイクスルー感染についてその11

 

【高度なワクチン接種を受けた医療機関従事者におけるSARS-CoV-2感染の再燃】

Keehner J, et al. Resurgence of SARS-CoV-2 Infection in a Highly Vaccinated Health System Workforce. N Engl J Med. Sep 1, 2021.

https://doi.org/10.1056/NEJMc2112981.

202012月,the University of California San Diego Health UCSDH)の従業員は,重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2SARS-CoV-2)の感染が劇的に増加した.202012月中旬にmRNAワクチン接種が開始され,3月には従業員の76%が完全接種し,7月にはその割合が83%にまで上昇した.20212月初旬には,感染が劇的に減少した1)3月から6月にかけて,毎月30人未満の医療従事者が陽性と判定された.しかし,615日にカリフォルニア州のマスク着用義務が終了したのと同時に,4月中旬に出現したB.1.617.2(デルタ)変異が7月末までにUCSDHの分離株の95%を超えて占めるようになり(Figure 1),完全ワクチン接種者の感染も含めて,感染が急速に増加した.mRNAワクチンの有効性(effectiveness)を検証するために,ワクチン接種に関する行政データと症例調査データを使用することについて,機関審査委員会の承認を得た.

 

 

Figure 1: SARS-CoV-2 Variants among Symptomatic Health Workers.

Shown is the distribution of the B.1.1.7 (alpha), delta, and other SARS-CoV-2 variants according to vaccination status and month of diagnosis among health workers at University of California San Diego Health, March through July 2021. The number of workers indicates those who were symptomatic and had available variant data, and the number of positive tests indicates those that included data on variants.

https://www.nejm.org/na101/home/literatum/publisher/mms/journals/content/nejm/0/nejm.ahead-of-print/nejmc2112981/20210831/images/img_xlarge/nejmc2112981_f1.jpeg

 

UCSDHでは,SARS-CoV-2検査の敷居を低く設定しており,ワクチン接種の有無にかかわらず,日常的なスクリーニングで少なくとも1つの症状が見られた場合,または特定された曝露があった場合に検査が実施される.202131日〜731日までに,227人のUCSDHの医療従事者が,鼻腔スワブの逆転写酵素定量ポリメラーゼ連鎖反応(RT-qPCR)法によりSARS-CoV-2陽性と判定されたが,227人のうち130人(57.3%)は完全ワクチン接種していた症状が出たのは,完全ワクチン接種者130人のうち109人(83.8%),未接種者90人のうち80人(88.9%)であった; いずれのグループにも死亡例はなく,ワクチン未接種者1人がSARS-CoV-2関連の症状で入院した

ワクチン有効性は,3月から7月までの各月ごとに算出した; 症例の定義は,Covid-19感染歴がない人でPCR検査が陽性であり,1つ以上の症状がある場合とした(Supplementary Appendix).ワクチン有効性は,3月から6月までは90%を超えていたが,7月には65.5%95%信頼区間[CI], 48.9-76.9)に低下した(Table 1).7月の罹患率(case retes)を,従業員がワクチン接種を完了した月に応じて分析したところ,1月または2月に接種を完了した従業員の罹患率は6.7/1000人(95%CI, 5.9-7.8)であったのに対し,3月から5月までの期間に接種を完了した従業員の罹患率は3.7/1000人(95%CI, 2.5-5.7)であったワクチン未接種者の7月の罹患率は16.4/1,000人(95%CI, 11.8-22.9)であった

Table 1: Symptomatic SARS-CoV-2 Infection and mRNA Vaccine Effectiveness among UCSDH Health Workers, March through July 2021.*

https://www.nejm.org/na101/home/literatum/publisher/mms/journals/content/nejm/0/nejm.ahead-of-print/nejmc2112981/20210831/images/img_xlarge/nejmc2112981_t1.jpeg

SARS-CoV-2mRNAワクチンであるBNT162b2Pfizer-BioNTech社)とmRNA-1273Moderna社)は,初期臨床試験でそれぞれ95%94.1%の有効率(efficacy retes)を示し2)BNT162b2ワクチンについては,2回目接種から4ヶ月後に,わずかに減少したものの有効性が維持された(84%3).また,Lopez Bernalらは,12週間まで接種間隔を延長したイングランドにおいて,デルタ変異に関連する症候性疾患に対するワクチン有効性が88%で維持されたと報告している4).他の研究者が,標準的な緊急使用許可の間隔に従ってmRNAワクチンを接種した集団で観察されたように5)我々のデータは,あらゆる症候性疾患に対するワクチン有効性はデルタ変異ウイルスに対してかなり低く,接種後時間が経つにつれて減衰する可能性があることを示唆している

6月から7月にかけてワクチン有効性が劇的に変化したのは,デルタ変異ウイルスの出現と時間経過に伴う免疫の減衰の両方が原因であると考えられるが,これに加えて,カリフォルニア州ではマスキングの義務が終了し,その結果,地域社会での曝露リスクが高まったことも影響している.今回の結果は,回避可能な疾患や死亡を防ぎ,この恐ろしい変異ウイルスが蔓延して社会が大混乱に陥るのを避けるための戦略として,ワクチン接種を増やす努力を続けることに加えて,屋内でのマスキングや集中的な検査戦略などの非医薬品的介入(nonpharmaceutical interventions)を迅速に再開することの重要性を強調するものである.さらに,免疫の減衰に関する今回の調査結果が他の環境でも検証されれば,ブースター接種が必要になるかもしれない.

References

1) Keehner J, Abeles SR, Torriani FJ. More on SARS-CoV-2 infection after vaccination in health care workers. reply. N Engl J Med 2021;385(2):e8.

2) Baden LR, El Sahly HM, Essink B, et al. Efficacy and safety of the mRNA-1273 SARS-CoV-2 vaccine. N Engl J Med 2021;384:403-416.

3) Thomas SJ, Moreira ED Jr, Kitchin N, et al. Six month safety and efficacy of the BNT162b2 mRNA COVID-19 vaccine. July 28, 2021 (https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2021.07.28.21261159v1.) preprint.

4) Lopez Bernal J, Andrews N, Gower C, et al. Effectiveness of Covid-19 vaccines against the B.1.617.2 (Delta) variant. N Engl J Med 2021;385:585-594.

5) Israel A, Merzon E, Schäffer AA, et al. Elapsed time since BNT162b2 vaccine and risk of SARS-CoV-2 infection in a large cohort. August 5, 2021 (https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2021.08.03.21261496v1.) preprint.

 

 

 

 

 

 

 

BNT162b2ワクチンを用いたワクチン接種およびブースター後のデルタ変異SARS-CoV2ブレイクスルー感染のウイルス量】

Levine-Tiefenbrun M, et al. Viral loads of Delta-variant SARS-CoV2 breakthrough infections following vaccination and booster with the BNT162b2 vaccine. medRxiv. Posted, Sep 1, 2021.

https://doi.org/10.1101/2021.08.29.21262798.

Pfizer/BioNTech社のBNT162b2ワクチンは,疾患予防に高い有効性1)2)を示すとともに,感染予防,疾患予防,入院予防,重症あるいは死亡予防にリアルワールドで有効性を示している3)-5).さらに,このワクチンは,ブレイクスルー感染(BTI)のウイルス量を減少させることも示されており,疾患重症度を低下させるだけでなく,感染性も減少させることが示唆されている6)-8).実際,全国的なワクチン接種キャンペーン後には感染率が低下し,その効果はワクチン接種者個人だけでなくコミュニティレベルにまで及んでおり9)-13),集団免疫や疾患根絶への期待が高まっている.イスラエルでは,迅速な全国的なワクチン接種キャンペーン(3ヶ月以内に50%を超えた)の後,新規COVID症例がほぼ完全に根絶された14)

しかし,広範囲にわたるワクチン接種キャンペーンとその最初の劇的な効果にもかかわらず,6月中旬以降,イスラエルを含むワクチン接種率の高いいくつかの国で新たな急増が観察されている.この感染率の増加,特にBTIの増加は,ワクチンによる免疫応答の減衰と,今回の急増で主流となったデルタ変異ウイルス(B.1.617.215)-17)に対する免疫応答の低下という2つの要因に起因していると考えられる.ワクチン接種後の時間を考慮すると,6ヶ月後には感染防御の効果が減衰することが示されている2)16)18)19).それにもかかわらず,重症疾患やその影響を防ぐ効果の低下はわずかであることが観察されている20)21).デルタ変異に対する有効性の違いを考慮すると,デルタ変異によるBTIのウイルス量を減少させるのにワクチンが有効かどうか,またどの程度有効かについては,報告に大きな違いがある8)22)-32)

このような不確実性を考慮して,パンデミックの現在の波を抑制するために,米国や英国に続き,イスラエルでも,2回目接種から5ヶ月が経過した人に3回目接種(ブースター)を提供し,推奨することを決定した33).ブースター接種は,まず60歳を超える人に提供され,その後、徐々により若い年齢層にも拡大された.霊長類を対象としたmRNA-1273ワクチンを用いたベータ変異に対するウイルス力価に関するブースター試験の結果35)と並んで,ブースター注射が感染予防に有効であることを示す最初のリアルワールドデータが得られている34).しかし,ブースター接種がBTIのウイルス量にどのような影響を与えるのかは,ヒトやデルタ優勢のリアルワールドではまだ明らかではない.

本研究では,Maccabi Healthcare ServicesHMS)の陽性患者から,3つのSARS-CoV-2遺伝子ENRdRpの逆転写定量ポリメラーゼ連鎖反応(RT-qPCR)検査(Allplex 2019-nCoV assaySeegene社)測定結果を後ろ向きに収集し解析した.イスラエルでデルタが優勢であった628日〜824日における(93%を超える)36)20歳を超える成人の感染に焦点を当てた.このデータセットとワクチン接種データを照合した結果,未接種者の感染が1,910件,2回接種者のBTI9,734件,ブースターワクチン接種者のBTI245件確認された(Methods: Vaccination status, Extended Data Table 1).

我々は,これらの感染(n= 11,889)を対象に,3つの遺伝子のCt値について,性別,年齢,暦日を調整するとともに,感染前の異なる時間ビン(time bins)でのワクチン接種,ブースターの投与を考慮した多変量線形回帰モデルを構築した.RdRp遺伝子に注目すると,ワクチン接種者と未接種者の回帰係数は,2回目のワクチン接種後730日目のBTI4.1[95%CI: 1.6-6.6]で始まったが,経時的に減少し,約2ヶ月後には0.7[CI: 0.11.3]となり(P= 0.0002, Methods: Ctの経時変化),ワクチン接種後6ヶ月以上の感染では有意でない値にまで減少した.しかし,この低下は,ブースター接種後に逆転し,Ct2.2[CI: 1.6-2.9]増加し,ウイルス量が4倍を超えて減少したことと一致した(Methods: Linear regression, Figure 1a).また,他の2つの遺伝子,NEについても同様の傾向が見られた(Extended Data Fig 1).このモデルでは性別と年齢を調整しているが,国の展開ガイドライン(national rollout guidelines)により,ブースター群の平均年齢が2回接種群の平均年齢よりも高かった(68.2 vs 43.8歳)ことに着目し,我々は,50歳を超える患者に限定して多変量線形回帰分析を繰り返したところ,同様の結果が得られた(Extended Data Fig. 1).最後に,今回の急増では,ワクチン接種後2ヶ月以内の患者はごく一部であるため,集団全体で考えると,ワクチン接種群と未接種群の間にはごくわずかなウイルス量の差しかないことに注意が必要である(0.26[CI: 0.02-0.51], Figure 1b).

我々の結果は,ワクチンはデルタによるブレイクスルー感染のウイルス量を15[CI: 4-53](接種後最初の2ヶ月を超える平均)にまで減少させることができ,デルタによるブレイクスルー以前の変異ウイルスに対する初期の有効性と一致していた6)7).しかし,このウイルス量に対する有効性は,ワクチン接種後の時間経過とともに低下し,3ヶ月後にはすでに有意に減少し,約6ヶ月後には事実上消滅した.ワクチンを接種した集団の大部分が接種後2ヶ月を経過した時点でデルタが出現したため,デルタに対するワクチンの集団全体の平均的な効果はごくわずかであり,デルタに感染したワクチン接種者と未接種者の間でCtに差がないという報告と一致し,説明がつく.また我々は,たとえデルタ感染者が急増した場合でも,ブースター接種によってウイルス量の減少効果が回復することがわかり,ワクチンによる伝播性の減少が回復したことが示唆された.以上の結果から,今回の急増とそれ以前の急増の間で見られたワクチンによるウイルス量減少の違いは,2回接種直後やブースター接種の期間にデルタ変異のBTIのウイルス量を減少させることができないというよりも,免疫の減衰に関連していることが示唆された.

我々の研究にはいくつかの限界がある.まず,ウイルス量は感染性の一般的なプロキシであるが,PCR陽性は必ずしもviable virusを意味するものではなく,ウイルス量と感染性の相関関係は感覚的であるが,完全には確立されていない.次に,最近の研究では,ワクチン接種者の方が,ワクチン未接種のデルタ感染者よりもウイルス量の減少が早いことが示唆されており26)32),症状が出てからかなり時間が経ってから採取されたサンプルでは,Ctに偏りが生じる可能性がある.我々は,この影響を最小限にするために,各患者の最初の陽性反応のみを対象とした(典型的には,症状に続き数日以内に検査が行われる37)).

ブースターによるBTIのウイルス量の減少という新たな効果がいつまで続くのか,また将来,同じ変異ウイルスやその他の変異ウイルスに対して追加のブースター接種が必要になるのかどうかは,まだわからない.しかし,少なくとも短期的には,ブースターワクチン接種によるデルタブレイクスルー感染のウイルス量の低下は,感染性の低下を意味しており,ソーシャルディスタンスを置くことやマスクなどの他の手段と合わせて,パンデミックの拡大を阻止するのに役立つと考えられる.

 

 

Figure 1: Association of infection Ct with 2-dose vaccination and with the booster.

Ct regression coefficients, indicating an infection Ct relative to unvaccinated control group (dashed line), show an initial increase in Ct in the first two months following the second vaccination dose, which then gradually diminishes ultimately vanishing for infections occurring 6 months or longer post vaccination. Increased Ct is restored following the booster (right bar). Coefficients obtained by multivariate linear regression analysis adjusting for age and sex (Methods). b, Same model as in (a) but without binning post-vaccination times. Since most of the vaccinated population during the current surge are more than 2 months post their second vaccine shot (Extended Data Table 1), at the whole population level the average effect of the vaccine on Ct is negligible. Error bars represent one standard error. * P-value <0.05, ** P-value <0.01, *** P-value <0.001. Data shown for Ct of the RdRp gene; for genes N and E see Extended Data Fig.1a,b.

Extended Data Figure 1: Association of infection Ct with 2-dose vaccination and with the booster, for the N and E genes.

Ct regression coefficients of the N gene (top) and the RdRp gene (bottom), indicating an infection Ct relative to unvaccinated control group (dashed line). Coefficients obtained by multivariate linear regression analysis adjusting for age and sex (Methods). Right, Same model but without binning post-vaccination times. Error bars represent one standard error. * P-value < 0.05, ** P-value < 0.01, *** P-value < 0.001.

Extended Data Figure 2: Regression coefficients for the association of Ct with 2-dose vaccination and with the booster for patients older than 50.

Same model as in Figure 1 and Extended Data Figure 1, but restricting for patients 50 years or older. Ct regression coefficients are shown for the RdRp (a), N (b) and E (c) genes. Error bars represent one standard error. * P-value < 0.05, ** P-value < 0.01, *** P-value < 0.001.

Extended Data Table 1: Number of infections by time since vaccination and booster shot.

References

省略.